★日本海新聞2009年2月6日掲載 「トゥヤーの結婚」紹介文


  中国、内モンゴルの草原地帯。かつては豊かな緑の草原がどこまでも続いていたこの地方も、打ち続く日照り、干ばつによる深刻な水不足となり、草は枯れ、むき出しの荒れ地が無残に広がっている。
  主人公トゥヤーは、事故で半身不随となった夫と幼い二人の子どもを抱え、家事、育児、介護に加えて三十キロ離れた地点まで、毎日水を汲みに行かねばならない。遠く離れた草むらまで、飼っている羊を連れて行くのも彼女の仕事だ。過酷な労働にトゥヤーは体を壊す。
  このままでは共倒れになると考えた彼女はある決断をする。彼女にとって最も大切なものは家族だ。
「家族は一人も離さない」という彼女の決断は、子連れ、夫連れの結婚だった。形式的には現在の夫と離婚した上での再婚となるが、再婚相手はトゥヤーの「家族」と結婚することになる。
  結婚に関する風習・奇習はいろいろあるかもしれないが、このようなケースはおそらくどこにもないだろう。それだけに因習や既成概念にとらわれないトゥヤーの決断が、強く胸を打つ。自分の立場を一歩もゆずらないトゥヤーの凛とした美しさ。ラストで初めて見せる彼女の涙は逆境に打ち勝った女性の安堵の涙だろうか。
  この作品は2007年度ベルリン国際映画祭でグランプリを獲得している。

(広田静子) 



感 想 集

★若いトゥヤーの将来に対する不安が無くなったことにほっとした。結婚相手を決めるということは人生最大の決断?ではないでしょうか。特に女性にとって! 選んだ相手と末永く添い遂げるということは、その間に流した涙も少なくないと思います。素晴らしい結婚衣装を身に纏ったトゥヤーに「よかったね」と言ってあげたいです。(スカイラーク 67歳)

★生きていく力の、力強いものが伝わってきました。トゥヤーが病院で、夫の前で泣く所が印象的でした。(56歳 女)

★モンゴルの風景と日本民謡に似た歌が映画の内容に合って良かった。きびしい環境とトゥヤーの心の哀しさが分かったような気がした。(62歳 米子市)

★一場面、一場面が絵画のようでした。そしてその一場面一場面に隠された意味が込められていたように感じました。音楽は民族の歌以外はなく最初は違和感がありましたがいつの間にか入り込んでいました。

★最後、終わったあと、この先この結婚生活はどうなっていくのだろうと興味を持ちました。トゥヤーの気持ちも痛いくらいわかりました。

★途中字幕が背景の色と同じで読めなかった。もう少し神経を使ったらと思う。

★トゥヤーを演じた女優さんのチャーミングさに圧倒されました。男どもは何なの、彼女の悲しみの深さに心打たれました。見終わって、何とも言えないところもありますが。

★会場が少し寒かったです。この先どうなるだろうかという終わり方だったような気がする。トゥヤーの為に命がけで井戸掘りをした人と結婚するには現実が厳し過ぎるのか。モンゴルの土地と人間、動物の姿が印象に残りました。(高松知恵子)

★こういうのって当然あって良いよねとまず思う。愛し合う人達がそれなりのあり様で助けあって生きていくって、自然なことと思う。規則だとか常識だとか、法律だとか以前に、ごく自然の収まり方ってあるのだと思った。(女性 60代)

★厳しいモンゴルのくらし。家族の為に自分を犠牲にして結婚するトゥヤー。結婚式の場面、ラストで泣き崩れる彼女の思いを表現するように馬頭琴のしらべがとても悲しい。10年前にモンゴルに行った事があります。格差のある社会、ウランバートルにはマンホールチルドレンがいました。馬に乗ったこと、馬が上手な少年たち、馬乳酒をのんで一晩中トイレに通ったことなどなど、いろんなことを思い出しました。(米子市 夢みるおばさん)

★モンゴルの自然の美しさときびしさの中で夫婦の愛の重さを感じた。久々にきれいな音楽を聴くことができました。(米子市 30代)

★どうしようもない貧困、その中で良かれと思ってやったことが次々と裏面にでる。この先彼女はどう生きていくのか…… (米子市 70代)

★生活することのきびしい中で女が一人で生きるのは大変なんですネ。やはり力(金)のある男の人に頼らざるをえないのです。女優さんがとてもすてきでしたネ。(米子市 57歳 女)

★いろいろと人間に関わる事が鮮明に描かれているのに感心した。恋愛のことなど。(R.H)

★これからが大変だろうな、と思える最後がやや意外でした。(米子市 51歳)

★文化が日本とだいぶ違うので、なんとなくすんなりと受け入れることが出来ませんでした。最後がケンカという形で終わったので、終わり方としてどうなのかな?と感じました。(米子市 38歳)

★生きることは難しいことだと感じました。豊かでない暮らし故の力強く生きる様、日本に住む私達には失われてしまっているものを見た気がします。

★トゥヤーの夫に対する愛情はあそこまでいくと、何愛なのでしょうか?と思いました。(50代 西伯郡)

★いずこの国も、いつの時代にあっても、母親の苦悩は絶え間なく、それに耐え忍ぶ力強さをあらためて感じました。それも幼い頃からはぐくまれた強い絆あってのこと……ただ、ややテンポの悪さを最後迄拭い切れなかったこと残念です。しかし、生活の貧しさから知恵は産み出されるものとあらためて教わった映画でもあったと思います。 (米子市 男性 72歳)

★まあ、珍しいものを観た……といったところ。(女 61歳)

★『紅いコーリャン』と比べるような作品ではない。中草電影今在何処。(井山宣和)

★最後の最後で、結局あの3人がどうなってしまうのかが見えて来ず「??」な感じでした。ハッピーエンドなのかも??だし。中盤まではなかなか面白かったですが…。ただ、あの過酷な環境下で母は強し!と言った感じですね。私も主婦ですが、もっと母は逞しくなくては!とトゥヤーの働きぶりには感服しました。(20代)

★退屈でした。モンゴルの草原の雄大さを思い知らされた感じ。生きていくことは過酷です。(M.I)

★わかりません。モンゴル内陸部の話ですか。(坂本義文 68歳)



      
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