★日本海新聞2009年3月30日掲載 「山桜」紹介文


  藤沢周平作品の映画化としては『たそがれ清兵衛』から五作目である。
  主人公の野江、弥一郎を田中麗奈、東山紀之が演じ、監督は『深呼吸の必要』『地下鉄に乗って』の篠原哲雄。
舞台は江戸後期、山形県の庄内地方にあったという設定の架空の海坂藩。
武家の嫁として忍従の日々を送る野江が、取り返しのつかない道を選んでしまった絶望を超えて光明をみつけていく物語である。
主人公二人を取り巻く人々にも、篠田三郎、檀ふみ、富司純子と演技派がそろい、重厚な雰囲気をかもし出している。
  原作は新潮文庫『時雨みち』に収録された約二十ページの短編で、藤沢の長女遠藤展子さんは作品を観て、「本のページをめくるように父の原作の映画を観たのは初めての経験でした」と述べている。
それは、原作がたたえる余韻や気品が映画で見事に表現されていることの証であろう。
  映画化された藤沢作品の醍醐味は土地や、時代の空気である。
時代劇なのに、描かれた時間の流れや人々の心の持ちようは現代的のいう作品も多い。
藤沢作品ではその時代ゆえのじれったいまでのテンポ。そこに生きる人々の気概が観る者を包み、つかの間自分たちの価値観が通用しない世界に身を置く体験をする。
が、同時にどんな時代にあっても人間らしく生きようとする人々の普遍的な姿に共感するのである。
  CMでは「立派な女優」になった田中麗奈の凛とした演技が楽しみである。

(田淵涼子) 



感 想 集

★初めてこの会に入って観ました。新聞で見て「山桜」が観たくて来ました。DVDでも借りて観れるけどやはり大きな画面で観てみたかったです。藤沢周平さんの作品、何冊か読んでいて、映画の作品も好きです。武家の生活や、人々の思いが言葉以外からも伝わってきて、とても温かい気持ちになります。(川本 忍)

★藤沢周平の作品らしく、ハッピーエンドで終わる予感をさせる作品で安心して観られました。素敵な声で美しい日本語を聞くのはとても気持ちのいいものです。再度藤沢周平原作の作品をお願いします。(番原隆志)

★とても穏やかな気持ちになれました。(清水久美子)

★判決の結果がどう出ようと、野江さんは幸せをやっと見つけたのだと思う。弥一郎のお母さんに受け入れられて心から救われて涙を流したのではないか。野江のお母さんに「少し回り道をしているだけ」と言われて、自分の本心に気付き、生き方が分かったのではないか。藤沢文学の一端を知る事が出来た。東山紀之の抑えた演技がよかった。(高松知恵子)

★風雪に耐えて咲く山桜。そこで出合う女と男。「あなたは少し遠回りをしているだけ……」この作品のテーマはこれだ。三十路の麗奈さんがいい。東山紀之美しい。一青窈の歌も余韻を残した。(宇田川靖)

★時代劇にしては良かった。(坂本義文)

★見終わってほのぼのとした。暖かみを覚えた。(青い蝶)

★久しぶりの日本映画、とても良かったです。藤沢作品の映像化、景色、花が良かった。農民の苦悩、悪政が描かれていましたね。今の時代と似ているかも、格差の広がりなど……。田中麗奈さん、ちょっと違う女優さんが良かったように思います。(米子市 60代)

★久しぶりに日本映画を見て嬉しかった。日本の古い時代、正義が報われることも……人々が助け合うことも……和やかにむかえいれてくれる家族のあたたかさ等……感動しました。自然の厳しさと桜の花のうつくしさ、やさしさ、ほのぼのとした心にしてくれました。(米子市 70歳)

★心豊かになるような……結末がないのもやさしさでしょうか。武士の妻、母、女性の“肝ったまのすわった”部分に安心感を覚えました。 ★久しぶりの日本映画で良かった。藤沢周平の作品の中で一番良かった。(米子市 62歳)

★藤沢周平の作品。大好きです。(米子市 62歳)

★純愛、とても素晴らしかったです。きっと弥一郎が帰って来られなくても、きっと幸せな人生をこれから過ごせると思います。桜、そして、エンディングの一青窈の主題歌もとても良かったです。(米子市 47歳)

★“ほんの少しまわり道をしただけ”という言葉が心に残りました。原作の良さが充分生かされた作品、満足しました。(米子市 70歳)

★ちょうど時期の山桜、とても大きくて、ダイナミックな桜で感動しました。小さな事に余り気にしないですばらしかった。生きたいとつくづく思いました。有難うございました。(60代 女性)

★とても良い映画を見せていただきました。藤沢周平さんの作品はずっと昔のことなのに人間の大切なものを背骨に持っていて、いつの時代にも通じるものです。景色の美しさ、俳優さんの演じ方に久しぶりに清々しい気持ちになりました。(米子市 70歳)

★とても良かったです。日本映画は私達によく分かってとても良かった。(米子市 70歳)

★桜も八部咲きの上天気の日曜日にふさわしい作品で最後は涙々でした。もちろん二人は幸せになるでしょう。ゆったりとして春らしい作品でとても気持ち良く見られました。

★二人が一緒にいるシーンは最初の方の少しだけでしたが、相手のことを想っている様子は深く伝わってきました。スクリーンで見る山桜はとってもきれいでした。富司純子が出てきて空気が変わりました。やはり存在感がありますね。(田中英治)

★日本の原風景が良かった。さすが藤沢作品、しっとりして落ち着きあるものとなっていたと思います。富司純子の存在感が良かった。(M.I.)

★いいんだよ。外しようもないしね。ただ、海坂藩と映画村はミスマッチだな。(井山宣和)

★ちょんまげはどう見ても格好いいとは見えないし、農民はアカにまみれて、ふとんもないところで雑魚寝。時代劇はちっともきれいでないし、女子供は使用人と、期待していませんでしたが、主人公がお百度をふむところ、何気ないけどやさしい言葉をかけられ涙にくれるところなど感激しました。終わりも明るい未来を感じさせるもので後味のとてもさわやかなものでした。良かったです。

★藤沢周平のものを読んだことがなかったが、映像でその端正な世界を知ることが出来た。藤沢ファンが多いのがうなづけた。(60歳代 女性)

★改めて日本の四季の移ろい、素晴らしさを感じました(米子市 51歳)

★静かな美しい作品でした。予想外に良かったです。が、最後のテーマソングはちょっといただけませんでした。せっかくの静かな作品があのうた一つでぶちこわし!!って感じです。

★テンポがゆっくりなのがとてもよかった。まわり道っていう道があったんですね。(和子 66歳)

★映像の美しさがとても印象に残りました。正義とは何なのだろうかと考えてしまいました。(米子市 37歳)

★野江役(田中麗奈)が今いち。可愛らしさ、目のやさしい女性がよかったかな〜。(米子市 73歳)

★苦手なタイプの映画なのだが、不思議と見終えたあとがすがすがしかった。映画というより映像詩と読んだ方が良いような作品。(鈴木)

★結末に不満が残る感じでした。

★全く納得のいかない映画化。無用な主題歌の挿入が映画をこわした。監督は藤沢周平の原作をどのように理解していたのだろうか。(S.M 69歳.)

      
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