★日本海新聞2012年2月掲載「彼女が消えた浜辺」紹介文


 イランは世界有数の産油国であり、中東地域全体に大きな影響力を持つ国である。
 映画製作の歴史も古く、過去に何度か賞も獲得しており、高い水準のノウハウを持っている。
 今回上映予定の「彼女が消えた浜辺」は、第59回ベルリン国際映画祭で、最優秀監督賞(銀熊賞)を受賞した作品である。
  監督アスガー・ファルハディーは1972年生まれ。浜辺のリゾート地で忽然と消えた一人の女性をめぐる群像劇。
 次第に明らかになる真実と驚愕の事実をミステリータッチで描いている。
  バカンス、浜辺の別荘、車、日常生活のアイテムは日本とあまり変わらない。
 世界がボーダーレスになりつつある現在、共感と共鳴をもって迎えられる映画だと思う。

(米子シネマクラブ会員 広田静子) 



   
感 想 集

★これが小説だったらどんな風に感じただろうか。原作を読んでいて映画が面白かった、というのはあまりないが、原作と映画は別ものであるから、それはそれで当然かもしれない。
 今までは観終ってロビーで誰かれとなく、あゝだ、こうだと語り合ってしまっていたが、今回は書いてみる気になった。何故ユリは死を選んだか、という映画が問いかけることを私も問いたい。溺れかかっている子どもを何故助けなかったか。
 フィアンセに対して愛情がなかったことが死への理由なのか、他に何かあるのか。今回はちょっとミステリアスである。日本の文化を土台に考えては「何故」は解決しないようだ。イスラム教について、あまりになにも知らなさすぎた。
 世界は多様だ。いろいろな民族が各々異なる文化を持ち、それを支えに生きていることを忘れてはいけない。この映画はそんな様々な文化をひもといてくれている。(畠山和子)

★ニッサン、プジョー、BMWいろんなものがまじっていて、きれいな顔立ちの女性たち、露出の低い地味な服装、陽気な集り、知らない世界を見せていただきました。(ぽん太)

★イランの都市住民を初めてみた。なんか『スルース』みたいで、秀逸。(井山宣和)

★最後にエリの名誉をまもれ救いになった。群像劇を興味深く最後までみせてくれました。(匿名)

★最初、登場人物の関係が分からなくて本当に困りましたが、次第に明らかになって、ラストは胸が痛くなりました。波の音がすごくて強く印象に残りました。(匿名)

★本当に海で溺れたのか。最後まで分からなかった。彼らの関係が何なのかがよくわからなかった。親しくて助け合って、幼稚園か小学校の保護者会のレクの様なもの?イスラムの国では男女の不倫などが罪になるの、人の恋路のもめ事にかかわらない方がいいとつくづく思いました。海の波の音がバックグランドになって、美しくもなく殺伐としていました。女性の区別がつきにくかった。みんなスカーフを巻いていたから―。(小徳澄美 57歳)

★イランの日常生活はもっと抑圧的なのかと思っていたらそうでもなかった。ただ、婚約者がいたことを黙っていたことは、掃除や料理をしたくらいで償えないという台詞はイスラム的だなと思いました。エリは婚約者のこと実は死ぬほどイヤだったのかな‥‥謎だ。(大田市民)

★エリがいなくなってからの、一人一人の心理描写が上手いと思いました。嘘が一杯あって、それぞれの人がどこまで事の真相を分かっているのか。日常生活とはそんなものかもしれないと思えました。3年間エリ一筋だった婚約者とエリが生きていたらどうなっていただろうと、イスラムのしきたりの中での恋愛の難しさが思われました。(高松知恵子)

★予想に反して緻密に描かれた心理劇だと思った。イラン映画は多くは観ていないが、いつ観ても優れた作品が多いのに改めて感心する。帰ってからゆっくり思い出して反芻してみたい作品だと思う。(匿名)

★良質のヒューマンサスペンス。すぐに引き込まれました。結局誰も悪くはないんですよね。(匿名)

★国が違えばルール、習慣などすごく違うのだなと思いました。(渡辺 女)

★残念ながら期待外れだった。エリという女性はもっと別な道があったと思うのに。(匿名)

★ちょっとした心の行き違いで楽しい行事が辛く悲しいものになりましたね。誰もがあまりに人を当てにした行動がこのような結果になったのですね。(匿名)

★見ている者が救われないような砂をかむようなドラマは健康に悪い。(匿名)

★BGMが波の音だけというのが何を表しているのでしょう。無理に誘ったエピネーのこれからの苦しみ(嘘をいったから)。婚約者の苦しみ。そんなことを考えます。(匿名)

★何が云いたかったのか。誰かの虚構の上に立って、みんなを動かしている‥‥。まさかそんなものではないだろうが。(匿名)


      
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