◎アニメで終わるか?
   映画に化けるか?スタジオジブリの新作「猫の恩返し」。


「ありがとうと言ってくれて、 ありがとう」

   今作、「猫の恩返し」は、大ヒット作「千と千尋の神隠し」に次ぐ、スタジオジブリの新作である。
   当たり前の話ではあるが、宮崎駿監督の新作ではない。
なのに、劇場では何を期待してか、普段アニメを観ないような客層がある程度いたのは事実である。
 宮崎アニメの面白さは、子供にはエンターティメントとして楽しめ、映画ファンの大人達には社会風刺のメッセージ性のある映画として、受け止められる所だと僕は分析している。
 おそらく、普段アニメを観ない様な人達は、スタジオジブリというブランドに引き寄せられて、劇場に足を運んだに違いない。
その人達にとって何を期待して、この「猫の恩返し」を観に来たのか、また観終わった後どういう感想を持ったのか。
 僕は、この作品を観終わって、まず最初に思ったのが、そういうことだった。
 主人公のヒロイン「ハル」は、学校の帰り道で、トラックに轢かれそうになった猫を助ける。
その猫は、立ち上がって礼を言いその場から去っていった。唖然とする、ハル。
その日から猫の国の猫達は、ハルにつきまとい始め、猫の国の妃になって欲しいと言い、ハルを猫の国に連れて行ってしまう。
ハルは、途中で知り合った自分に味方をしてくれる猫達と一緒に、猫の国からの脱出を試みるが。
 この映画のキャッチコピーによると、猫の国とは時間の止まった国で、日がな一日ゴロゴロして楽に生きていける国らしい。
  が、それは自分の時間を生きられない奴の行く所。
 ハルは、どちらを選ぶ?
 なんとなくこの作品も、「千と千尋」と似ているテーマではある。
 しかし、「千」と圧倒的に違うのは「千」が、比喩を多用した社会風刺がドラマの奥底にあるのに対して、「猫の恩返し」では、ストーリーの展開も、登場人物の心の動きも、全てファンタジーの域を脱していない点にある。
普通の若年層向けアニメで終わっているような気がする。
それを普段アニメを観ない、映画を観に来ない人達が、どう本作を観たのか、僕はこの作品を観終わって、まず自分の感想よりそっちのことの方に興味を持った。
 個人的には、子供に見せるためのアニメではなく、メッセージ性のある「映画」になっているアニメの方が好きなので、今作はイマイチ物足りないという感じ。
でも、初監督作品にしては、アラは目立たないし、ラストのつじあやのの歌うエンディングは、とても爽やかで嫌味の無い出来にはなってます。

      
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