アジア映画よ世界へ飛べ!  色彩による感情表現は、新たなる武術神話を作れるか?

「グリーンディスティニー」を狙い撃つ
チャンイーモウのハリウッド超大作「HERO〜英雄」

   

 数年前からハリウッドでは、CGやガンアクション物に頼らない、肉体をメインに据えたアクション映画が、新しいジャンルのひとつとして確立している。
「作られた圧倒感」だけでなく「自然体の迫力」も、異文化的な魅力があってブームに火が点いたのではないだろうか。
その火付け役は、ジャッキーチェンなのだろうが、
興行成績に於いても作品的な評価に於いても決定打を放ったのは、アンリー監督の「グリーンディスティニー」だろう。
 日本では、あまりヒットはしなかったが、(ストーリーは単純なんで、「だからどうよっ?」って感じの映画なんだが)東洋のエキゾチックな感じやファンタジー的な要素、
そして何よりもワイヤーアクションを駆使した肉体のキレが、世界に絶賛されたのだろう。
アジアの昔風な自然の風景と肉体の躍動感が、画面の中で上手く調和していて、実に気持ちの良くなる映画だった。
そして、その夢よもう一度という感じでこの8月に公開になるのが、「HERO〜英雄」である。
 秦の時代。始皇帝暗殺を企てていた3人の刺客を全て討ち取ったとして、一人の男が始皇帝の前に現れる。
彼の語るその戦いの話は、どこか疑わしい要素を含む謎めいた話だった。
謎がやがて不安をかきたて、話も二転三転していくうち、やがて驚くべき真実が明らかになっていく。
 この作品はアジア各国では、これまでの興行成績を全て塗り替えるビッグヒットを記録しており、ベルリン映画祭では、特別賞を受賞している。
監督は、「赤いコーリャン」、「初恋の来た道」、「あの子を探して」の名匠、チャンイーモウ。
本作が、初のハリウッド進出の大作映画であり、初のアクション映画である。
撮影は、ウォンカーゥアイ映画でキレのある映像美で定評のあるクリストファードイル。
音楽を、「グリーンディスティニー」のタンドゥンが担当する。
キャストは、主役に「少林寺」のジェットリーを配し、「花様年華」のコンビ、トニーレオンとマギーチャン、
「初恋の来た道」、「グリーンディスティニー」のチャンツィイーが、顔を揃える。
初アクション映画で、それなりの成果をあげた(監督自らが、描きたい視点で描いたらこんな作品になりましたって感じか?)アンリー監督の「グリーンディスティニー」。
人物の感情を描く事に関しては、アンリーよりチャンイーモウの方が上手ではあるが、物語とアクションを融合させた上で、「映画」として成立させる手腕は、果たしてどちらが上か興味があるところだ。
 アクション映画は、常々その派手さばかりが先行して、その内容は馬鹿にされてしまう傾向にある。
スカッと気分よくさせる映画でありながら、内容的にも感動を与えてくれるような、そんな作品がそろそろ出てきそうな予感がする。
ハリウッドのアクション映画は、いま分岐点に立つ。

[戻る]