「踊る大捜査線2」日本映画実写歴代興行収入新記録達成! そのいい感じのぬるさ加減は、邦画界の新しい到達点か? これを書いている8月下旬の段階で、本広克行監督の「踊る大捜査線2」が、日本映画界、実写歴代興行収入新記録を達成した。 あの「南極物語」以来の快挙だそうだ。 当初、映画メディアの物の見方は少し世間ずれしていて、今年初めの織田裕ニの主演の映画「TRY」が、ヒットしなかった事も考えて「踊る」もやばいのではというような読みもあったようだ。 だが、世間一般の人達は、そんな捉え方などしない。映画が、スターの存在で成り立っているなどというのは、映画メディアの時代遅れした考え方だ。 実際「踊る」が、ヒットしている今でも、「TRY」のレンタルビデオは、高回転率などしていない。 観客は、織田裕ニが観たいのではなく、「踊る」の新作が観たかったわけだ。こうしたユーザーの必要性がリサーチ出来ていない事が、日本映画のヒット作を生み出せない要因であると思う。 映画メディアは、「映画」というものにプライドを高く持ちすぎるがゆえに、かえって閉鎖的な発想に陥っているといえる。 日本映画界の現在と観客ニーズのズレについて前置きが長くなってしまったので、この辺で「踊る2」自体の出来について。 ストーリーのテンポも良いし、時代を踏襲した事件の題材も前作同様にOK。「踊る」が極めた警察機構の描き方も、各キャラクターの活躍のさせ方も、プロフェッショナルなエンターティメント映画のお手本となるような映画の完成度である。 実に見事な2時間半の映画で、おそらく足を運んだ観客のほとんどが満足して劇場を後にしたことだろう。 が、しかし、コアな映画オタクとしての意見をいえば、対比する女性キャラの真矢みきと深津絵里の、(今回のテーマのひとつでもある)「組織の中での女性の仕事」について、突っ込んで描いてくれると面白くなったのではないかという気がする。 真矢みきの存在感が圧倒的だっただけに、ただの敵役で終わらせてしまったのは残念。 警察組織のシステムの在り方と犯罪グループとの攻防についても、ここで、メッセージ性を入れれば映画的な面白さが出てくるのになあと思うのは私だけなんだろうか。 基本的に映画全体、判り易いトーンであくまでTV的な感覚を崩さないように、作品を成立させている。これは、作り手の側の完璧なる計算だ。 そこが、映画マニアとしては物足りない部分であり、一般観客にはすんなり受け入れられる境界線なのだろう。 「踊る」は、「踊る」であって、映画などに媚びて欲しくない。そういうのが、一般の観客の楽しみたいという映画に対しての定義なのだと思う。 判り易い作品がダメだとは思わないし、メッセージだとか、物語の意味とかを考えなければいけないというような作品がいいとも思わない。 ただ、映画ファンにはウケがいいが、一般の人にはワケが判らないとか、一般の人は面白がって観るのに、映画マニアは、そういうものを相容れない。 というのは、いささか面白くない。米子も、山陰では最大のスクリーン数を持つ土地である。その隔たりが狭くなっていけば、もっと映画人口も増えるのにと思うのだが。
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