「前田真宏くんのこと」

 彼は、その昔から僕達の間では有名人だった。
小学生の頃、大学ノートに連載マンガを描き、そのオリジナリティとデザインの美しさで、
クラス中のみんなを魅了していた。
 中学の頃、文化祭で展示された風景画は、大友克洋のような細密画のまるで夢の世界のような絵画。
「これは、本当にここの生徒の描いた絵なのか?」と、通り行く大人達の足を止めていた。
「まひろくんは、絶対こういう道に進むべきだ。そして、全国の人にもっと、彼の作品を観て貰えたら。」と、
僕はそう思ったものだった。それは、やがて現実のものとなる。
 「天空の城ラピュタ」、「オネアミスの翼」で、アニメーターとしてのスタートラインに立ち、
「不思議の海のナディア」、「ガメラシリーズ」、「新世紀エヴァンゲリオン」等のデザインワークスで活躍。
92年にスタジオ「GONZO」を設立して、98年にオリジナルビデオアニメーション「青の6号」で監督デビュー。
最近では、「アニマトリックス(監督)」、「キルビル(アニメ部分担当)」、「サムライチャンプルー(デザイン)」、
「どろろ(ゲーム)」など活躍が目覚しい。
 現在、テレビ朝日系、CSアニマックスで放映中の「岩窟王」では、シリーズ監督を務めるなど40歳を過ぎて、
ますますパワー全開の彼である。最近、テレビや雑誌でもゲストトークなどでよく見かけるが、
昔に比べて顔が精悍になってきたというか、なんか若々しくなってきた感じだ。
 彼の長年の夢であったTV「岩窟王」でも、「復習のパンクオペラ」というキャツチコピーをつけて、
ストラングラーズのジャンジャックバーネルを音楽に迎えるあたり、センスの良さは相変わらず。
 僕が松崎で、彼が前田。僕の出席番号の前にいた男は、大学ノートのマンガを飛び出して、世界のヴィジュアルアートを創造する。     


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