韓国人人質事件 許せぬタリバンの残虐行為
ただちに全員を無条件解放せよ
人命救出を最優先に
人命が第一である。残る人質全員の無事解放を心から祈りたい。
アフガニスタンの旧支配勢力タリバンによる韓国人ボランティア23人の拉
致事件は、発生から2週間が過ぎた。
この間、グループのリーダーと見られる牧師が早々に殺害され、先月(7月)
31日には2人目の犠牲者も出た。事態は一刻の猶予も許されない、極めて
憂慮すべき段階に入ったと見るべきだろう。
報道によると、牧師の遺体には10発もの銃弾が撃ち込まれ、2人目の犠
牲者も頭部を銃弾で砕かれたという。何と酷い犯罪か。身の毛もよだつ仕打
ちに怒りを抑えることはできない。
残る人質の身の安全と健康状態も心配だ。極限状況の中で心身の疲労は
限界に達しているにちがいない。タリバンはただちに無条件で全員を解放す
べきだ。
事件発生当初、タリバン側は解放の条件として、アフガン駐留韓国部隊の
即時撤退を求めていた。だがその後、要求内容はアフガン当局に拘束されて
いるタリバン兵士らの釈放に変わり、身代金が目的との情報も幾度となく流れ
た。彼らの真の狙いは何なのか。その組織の実体同様、犯罪行為の動機や
真意も漠として掴み切れない。
それだけに人質解放交渉も複雑で、難航を極めているようだ。このままでは
事態はじりじりと悪化の一途をたどり、ついには取り返しのつかない最悪の結
果となりかねない。ことは人命にかかわる問題であることを改めて深く認識し、
国際社会挙げて事態の打開に取り組むことが必要だ。
今回の事件は、昨年来、アフガン南部を中心に活動を活発化させていたタ
リバンの復活が“本物”であることを内外に印象付けた。米軍やNATO(北大
西洋条約機構)軍の大幅増強にもかかわらず、アフガンの治安はむしろ悪化
していることをも物語っている。
事実、今年に入ってタリバンのテロ攻撃はアフガン全土にまで拡大し、厳重
な警戒態勢を敷いている首都カブールでも自爆テロが多発している。犠牲者
も増え続けており、国連はタリバンの総攻撃が始まった昨年から今年4月ま
でに5000人以上が命を落としたと推定している。外国人を狙った拉致、殺
害事件も頻々と起きており、韓国人グループが拉致される前日にもドイツ人
技術者2人がさらわれ、1人が殺害された。
こうしたアフガンの治安の現状を思えば、韓国人グループの行動が軽率に
過ぎた観は否めない。韓国国内でも危機意識が欠けていたとの厳しい声が
あるようだ。
だが、今は「批判」よりも「救出」であり、「過ぎたこと」より「これから」の方が
大事だ。この事件を他山の石として、アフガンでの復興支援活動における安
全対策を見直すことが求められる。
正念場のアフガン再建
日本にとっても人ごとではない。現在、アフガンには政府やNGO(非政府組
織)の関係者など邦人約140人が支援活動に従事している。その尊い活動を
無駄にしないためにも、政府は彼ら彼女らの安全確保に万全を期すべきだ。
無論、このことは支援の手を緩めることを意味しない。日本をはじめ国際社会
がここで支援活動に躊躇するならアフガンは破綻国家へと逆戻りしかねないか
らだ。それこそタリバンの思う壺だろう。
事件は、あらゆる意味で、今がアフガン再建の正念場であることを伝えている。
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