自治体財政 住民に開かれた公会計に

情報共有してこそ改革も可能
「連結」決算は6%

 自治体の財政状況を資産や借金も含めて表すバランスシート(貸借対照
表)を作成している範囲が、いまだに多くで普通会計だけにとどまっている
ことが明らかになった。今年3月末時点で、全国の地方自治体(都道府県、
市区町村)を調査したところによると、2005年度決算について、地方3公社
(土地開発、道路、住宅供給)や第三セクター(自治体が出資している法人)
まで含めた連結ベースで作成している市区町村は、わずか117団体、6.4
%にとどまった。

 北海道夕張市の財政破たんの原因は、観光振興をねらって設立した第三
セクターへの巨額の投資と、事業失敗による負債が市の負担となったこと
による。それらの負担が予算書や決算書に表れてこないことが傷口を大き
くした。

 公営企業、公社、第三セクターなど普通会計以外も含めた自治体総体の
収入と支出、資産と借金、予想できる将来の負担、例えば職員の退職金や
各種施設の建て替え費用をどのくらい見込んでいればよいのかなどの財政
状況をしっかりと把握し、整理した上で公表、住民と情報を共有して理解を
得てこそ、財政の改善は可能になる。逆に言えば、財政改革は、こうした
住民に開かれた公会計の整備から始まることを、自治体運営にかかわる
人々は肝に銘じるべきだろう。自治体の規律が問われる今、その労力を惜
しむべきではない。

 一方、同じ総務省の調査によると、05年度決算について普通会計分のバ
ランスシートを作成した自治体は47都道府県15政令市すべてと、市区では
80%(前年度より12ポイントアップ)にあたる631団体、町村では46%
(同じく5ポイントアップ)にあたる467団体にのぼり、着実に増えている。

 これに公営企業会計、つまり上下水道、交通、病院などを加えた「地方公
共団体全体」のバランスシートを作成している市区町村(政令市除く)は177
団体(10%)。さらに、公社、第三セクターまで含めた連結バランスシートは、
都道府県、政令市の100%が作成しているのに対し、一般市区は84団体
(11%)、町村では18団体(2%)にとどまり、前年度からの伸び率も低い。

 しかし、連結バランスシートこそ、地方自治体の本当の財政状況を示すも
のであり、普通会計はその一部に過ぎない。地方財政の課題は、まさに公
営企業や公社、第三セクターが抱える200兆円を超える膨大な借金や、毎
年4兆円にものぼる普通会計からの巨額な補てんが、財政を著しく圧迫して
いることにある。その現実を、行政当局だけではなく議会、住民が直視して
こそ、改善策も立てることができる。

規模、運営の見直しも

 国は人口3万人以上の自治体に対し、2010年までに、連結バランスシート
はじめとする財務諸表を作成するよう求めている。また地方財政健全化法に
よって、08年度決算からは、連結ベースでの将来負担比率までが評価の
対象とされる。同決算は09年内にはまとめられる。つまり、ほぼ同時期まで
に、自治体の公会計の改革が求められている。

 公営企業、公社、第三セクターが本当に住民にとって必要なものなのか、
その規模や運営は適正なのか。どのような改善策が可能なのか。「住民の
ため」という地方自治の原点に立ち戻って、見直す時がきている。

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