「絶対無事故」心がけよう
夏の思い出を悲劇に変えないで
イライラは募るが
お盆休みを故郷や行楽地で過ごした人たちのUターンラッシュが始まり、
帰省時と同様、高速道路や新幹線などの混雑ぶりが報じられている。この
時期に集中する“民族大移動”は、わが国の夏の風物詩ともいえるが、残念
ながら悲惨な事故も後を絶たない。
12日には東名高速下り線で観光バスが渋滞中の車列に突っ込み、7台
が絡む玉突き事故が発生。最後尾で追突された車の2列目席でチャイルド
シートに座っていた生後6カ月の赤ちゃんと、その横にいた母親が死亡した。
14日には、山形県鶴岡市の国道7号線で、神奈川県警巡査部長の運転す
る乗用車が反対車線にはみ出し、対向してきた大型トラックと正面衝突。
巡査部長を含む一家4人が死傷している。それぞれ行楽、故郷に向かう途
中だった。
帰省ラッシュは土曜・日曜まで続くという。記録的な猛暑が続く中、特に運
転手はイライラや疲労が募り、注意力は散漫になりやすいだろうが、楽しい
夏の思い出を交通事故で悲劇に変えてはいけない。疲れたと感じたら無理
をせず休憩する、同乗者が声かけをし、運転中の居眠りを防止するなどして
絶対無事故を心がけてほしい。
ただ交通事故の場合、こちらが安全運転をしていても、巻き込まれることが
あるから恐い。12日の観光バスによる玉突き事故はその例といえよう。事
故現場は当時、約15キロの渋滞で、容疑者のバス運転手は渋滞情報など
を伝える電光表示板に気を取られ、前の車に気付くのが遅れたと述べてい
るという。が、運転手は観光バスの運転歴17年のベテランである。国交省が
事故翌日にバス運行会社を道路運送法に基づき立ち入り監査し、運転手の
勤務状況に無理がなかったかなどを調べたのは当然のことだろう。
観光バス事故と言えば、今年(2007年)2月、スキー客を乗せたバスが大
阪でコンクリート柱に衝突し1人が死亡、26人が重軽傷を負った事故で、運
転手の過重労働が問題になった。事故の背景には同業界の過当競争があ
ると指摘されているが、一つの事故を起こせば利用者の信用を失い、自社
にも多大な損害をもたらすことを各社は肝に銘じるべきだろう。トラックなども
同様である。特に渋滞時の事故は被害が広がるだけに、関係業者はこの時
期、安全第一の運転をさらに徹底してほしい。
また、各個人においても、一人の不注意がどれほど多くの人に被害を及ぼ
すか、よく認識して運転していきたい。まして飲酒運転など、もってのほかで
ある。
交通事故死自体はここ数年、減少し続け、昨年(2006年)は全国の死者
数が6352人と、史上最悪を記録した1970年(1万6765人)の4割弱まで
減った。しかし、飲酒運転による事故は1万件を超え、ひき逃げ事件が増加
したほか、シルバードライバーが増え、65歳以上の交通事故死が4割を超
えるなど新たな問題も出てきている。こうした問題に対処するため、先の国
会で道路交通法が改正され、9月からの一部施行で飲酒運転に対する罰
則強化などが図られる。
目標達成へ着実に
故郷や行楽地での思い出をいっぱい詰め込んだまま、すべての人が無事
故で帰宅することを念願してやまない。この夏の事故を最小限にとどめ、政
府が目標とする「2012年までに交通事故死5000人以下」の達成を目指し、
交通事故減少に取り組んでいきたい。
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