猛暑の大阪を冷やそう 進むヒートアイランド対策

日光遮る「みどりのカーテン」
子どもも大喜び 室温下げて、育てて食べられる
大阪府が枚方市など6市で実験

 都心部で気温が周辺より高くなる地域を、等温線で結ぶと“熱の島”が描
き出されるヒートアイランド現象。特に、大阪府の平均気温は、「100年間
で約2・1度も上昇、全国平均の1度を大きく上回る」(府みどり・都市環境
室)など猛暑対策が急務となっている。エアコンに頼らない環境にやさしい
まちをめざす大阪府や市の取り組みを追った。


赤ちゃんの実がなったよ!。「子どもたちは、育てたゴーヤの実がなって大
喜び。栽培を通じて自然の大切さを学んでほしい」と語るのは、大阪府枚方
市立樟葉幼稚園の前川なをみ園長。

 同府では今年5月から、府内6市7カ所で、建物の外壁につる性の植物を
育て、室内温度を下げる「みどりのカーテン」事業の栽培実験を行っている。
使用される植物は、ゴーヤのほか、キュウリやアサガオ、ヘチマ、ミニトマトな
ど。春から秋にかけて成長し、冬場には枯れる。場所も小学校や工場、事務
所などさまざまで、植える時期や規模、植物の種類など方法を変え、約30
パターンの育て方を試している。

 なかでも枚方市は、過去に全国の最高気温を記録したことがある“猛暑地
域”。同幼稚園では、遊戯室の窓側に張った編目状のナイロンネットにゴー
ヤを巻き付け、育てているが、夏場の強い日差しを遮断し、室内の温度を和
らげてくれる。年長の園児たちが、毎日交代で水やりを行い、夏の今は毎日
が“収穫日”。園児たちはとれたての新鮮なゴーヤを順番に持ち帰り、家庭で
チャンプルやてんぷら、サラダなどの食材として利用しているという。

 同府みどり・都市環境室では、「敢えて成長しにくい場所でも実験を行って
いるが、今後は集めたデータで事例集を作成し、安価で手軽な壁面緑化の
普及につなげていきたい」としている。

 同事業については、ヒートアイランド対策の一環として府議会公明党も強力
にバックアップしてきた。

“霧冷却”が市民に好評
水道水を高圧噴射 粒子細かく、体もぬれず
大阪市がドライミスト作戦

 一方、大阪市では“霧冷却”が市民に好評だ。これは、同市が今年6月から
段階的に行っている「ミスト作戦2007」。水道水を霧状にして、心斎橋筋商
店街やJRユニバーサルシティ駅、天六商店街など5カ所で散布している。

 ミスト散布は、水が気化する際に周囲の熱を奪う原理を応用したシステムで、
通常の水道管の20倍の圧力をかけ水粒子を噴射する。粒子は細かく、触れ
てもぬれないため、「ドライ型ミスト(乾いた霧)」と呼ばれる。同市水道局によ
ると、昨年の実証実験では気温が9度も下がることが確認された。水道料金
も約50メートルの配管で1日9時間使用しても190円程度にとどまるという。

 今月25日開催の世界陸上大阪大会でも、会場の長居陸上競技場のメーン
グラウンド内や入場待ちの観客が並ぶ誘導路などに導入する。さらに体力消
耗の激しいマラソンや競歩のコースではドライ型より粒子が大きい「直圧型」
で散布し、選手や観客らの過度の体温上昇を抑える計画。

 水道局では「財布にも環境にもやさしい新技術。将来はビル街や一般住宅
などにも広げたい」としている。

 このほか同市では、市役所本庁舎の屋上を緑化。南北に770平方メートル
の植樹帯を設け、南ブロックには花を主体とした開放感のある庭園を、北ブロ
ックには木や野草類などの植物を配し、鳥や昆虫が集まるような自然環境を
創出するなど、対策を強化している。

 ミスト散布や屋上緑化事業については、市議会公明党も定例会質問などを
通じ、積極的に推進してきた。

                            前のページに戻る