核テロの阻止へ国際協力
防止条約加盟で日本も重い責任
批准書を国連に寄託
テロとの戦いに日本はまた一つ重要な責任を負うことになった。核による
テロを防止するため2005年に国連総会で採択され今年(2007年)7月に
発効した核テロ防止条約に日本が加盟した。政府は4日、批准書を国連に
寄託、これによって9月2日に日本について同条約が正式に発効する。
核テロ防止条約は、国際社会が採択してきたテロ防止関連諸条約の13
番目となり、日本は全条約に加盟することになる。先の通常国会で政府は、
核テロ防止条約加盟に必要な法整備として放射線発散行為処罰法を成立
させている。
テロ防止関連諸条約の基本的な仕組みは、ハイジャックや人質をとる行為、
公共の場所への爆発物設置といった個別のテロ行為を加盟国の国内法で
処罰できるように定め、その上で、「引き渡すか裁判を行うか」の原則に従っ
て、犯人または容疑者を自国の裁判にかけるか関係国に引き渡す体制を国
際的に構築することによって、テロリストを法の網から逃れさせないようにす
ることにある。
核テロ防止条約も同様に、加盟国に(1)人の生命・財産を侵害する意図を
もって放射性物質または核爆発装置を所持・使用する行為(2)放射性物質
の放出を引き起こすような方法で原子力施設を使用・損壊する行為――を犯
罪とするよう求めている。
同条約には核保有国のロシア、実質的な保有国であるインドはすでに加盟
しているが、それ以外の核保有国はまだ加盟していない。日本は被爆国の使
命として加盟国拡大へリーダーシップをとる責任がある。同時に、世界有数の
原子力平和利用の国として、核物質の管理体制にすき間がないかどうか、絶
えず点検し信頼性を高める体制を保持する必要がある。
テロに対する国際的な対処の枠組みを探る努力は1930年代から始まって
いたが、第二次世界大戦後、国連が創設されてから本格的に動き出した。特
に、2001年の米国同時多発テロ以降は、国連だけでなく地域機構でも急速
に対策が進められている。現在のテロは、すでに一国の努力では防止不可能
であり、逆に一国でもすきを見せれば、テロリストの退避場所にされてしまう。
テロ対策の国際的枠組みとしては現在、(1)テロ防止関連諸条約のような
刑事上の措置(2)テロ支援国家に対する軍事的措置(武力行使)(3)国連安
保理決議による制裁措置(4)国際刑事裁判所など国際法廷による措置――
がある。(2)については異論もあって一般化は難しく、特に日本にとっては選
択肢に入らないが、それ以外の3分野では積極的な貢献が求められる。
日本はテロ対策として(1)国内のテロ対策強化(2)国際的協力の推進(3)
途上国のテロ対処能力を向上させる支援――を3本柱に掲げている。テロ対
策特措法に基づいて海上自衛隊がインド洋で実施中の米軍艦艇などへの洋
上給油も、国際協力に位置付けられている。
テロ特措法の延長も
テロ特措法は、同時多発テロに対する措置への協力を加盟国に求めた国連
安保理決議1368などを根拠に制定された国連支援であり、アフガンでの対テ
ロ作戦でテロリストを海洋ルートで脱出させないように監視任務に当たる各国
海軍の行動を支えている。11月には期限切れを迎えるが、重要な反テロ国際
協力であり延長が不可欠。政争の具としてはならないテーマだ。
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