概算要求 医師確保対策を着実に
研修病院の「定員」も見直しへ
緊急対策を具体化
盛り込まれた医師確保対策を着実に進めることで、誰もが安心して医療を
受けられる体制づくりが加速することを期待したい。きょう締め切られる来年
度予算の概算要求に、厚生労働省は医師確保対策など安全・安心で質の
高い医療体制の充実へ765億円(今年度650億円)を盛り込んだ。
概算要求の内容は、政府・与党が今年(2007年)5月末にまとめた「緊急
医師確保対策」を具体化したもので、公明党の提案も随所に反映されている。
予算編成で必要な予算が十分に確保されることを強く望みたい。
日本では今、地方での医師不足と、産科や小児科など診療科の医師不足
が深刻化している。医師全体の総数は、毎年4000人程度増えているにもか
かわらず、都市部への集中などを背景に、都道府県別では“西高東低”、医
療施設に従事する人口10万人当たりの医師数に2倍以上の開きがある。
他にも医師不足の原因として、(1)新臨床研修制度の導入で医師が集まり
にくい地域や病院がある(2)激務に疲れ果てた勤務医が開業してしまう
(3)結婚・出産を機に退職する女性医師が増加(4)高齢化の進展に伴う患
者数の増加(5)医療の高度化や細分化――などが指摘されている。概算要
求には、こうした窮状を好転させる施策を重点的に進める予算が盛り込まれた。
このうち地域の医師確保については、国は地方の一層の取り組みを促し、
都道府県の医療対策協議会が検討して行う医師派遣について支援。中でも
特に地域医療の“崩壊”に直面して緊急性が高く、各県の医療対策協議会が
努力してもなお必要な医師を確保できない地域に対しては、国レベルで緊急
臨時的な医師派遣を行う。
また、医師を派遣した病院(派遣元)にも、派遣医師が担っていた業務をカ
バーする医師の負担を軽減し診療体制を強化する機器の整備などの支援を
行う。
連続30時間以上の勤務を強いられるなど過酷な勤務から、勤務医が病院
を辞めていく問題に対しては、勤務医の交替勤務制、変則勤務制を導入する
病院の経費を補助するほか、日本小児科学会などから要望が強かった、勤
務医の事務を補助する医療補助者の配置を促進するモデル事業を実施する。
院内保育所の充実など、女性医師の支援策もさらに充実する。
2004年度にスタートした「新医師臨床研修制度」に伴い、研修医の多くが
大都市部の研修病院に集中、それ以外の地域の医師不足に拍車を掛けて
いる問題についても、来年度から具体策を講じる。都市部の臨床研修病院の
研修医が一定期間、医師不足地域での研修を行う場合に必要な経費を補助
する事業を新設する。
厚生労働省は予算措置とは別に、研修医の集中を是正するために研修病
院の定員見直しに今年(2007年)中に着手、医師派遣に協力する研修病院
に対して臨床研修費補助金を支給することも検討する。また厚生労働、文部
科学、総務3省は連携して対策を進めることにしており、全国の大学医学部
定員の暫定的な増員も検討されている。
効果の検証も必要
公明党は医師確保対策を強力に推進し「マニフェスト2007」にも重点公約
に掲げた。国民の命と健康を守る責任は国にある。盛り込まれた対策で決し
て十分とはいえないが、着実に実施に移して効果を検証、さらに浮かび上が
る課題に迅速に対応することで安心できる医療の構築をめざしたい。
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