HACCP認証制度に対する一考察

 HACCP認証を厚生省はマル総(総合衛生管理製造過程)として5品目の食品認証を与えている。又民間に多くのHACCP認証機関がある。
 しかし、雪印事件でも理解していただけるように国にも食品ごとにすべてを調査する能力はないのではないか。又、食品には冷凍食品のように範囲の広いものから牛乳のように工程が単純なものまである。牛乳・乳製品ですら国の調査が完全ではないのに、食品業界すべてをHACCP認証するのは無理ではないか。又地方では人口50万人そこそこの県もあるが、そこに中央から大きな食品企業が進出して来た場合、地方の保健所の役人が管理できるのであろうか。
 一方、日本の食品衛生法はあまりに事業者寄りで無責任であり、消費者利益を満たしていると思えない。安易に認可を与えているように思える。
 日本国憲法には国民の生命と財産を守る事が謳ってあるが、まさに食品による食中毒死は法が国民を守る原点に抵触する問題である。食中毒死で刑事事件につながったのは、営業許可停止時に製造した場合やフグ中毒等に限られているのはどうしたことか。
 私は高圧ガス取締法を勉強したものだが、通産省ですら危険物を取り扱うにはそれなりの免許が業者と個人に与えられている。然るに食中毒事故に関係する食品衛生法には、食品衛生取扱者とかでお茶を濁している。もっと業種ごと・企業規模に応じた取扱免許が必要ではないか。
 昭和22年に成立した食品衛生法は企業規模が大きくなった現代において、又食品のグローバル化に対応していないのではないかと思われる。厚生省行政における医療衛生はやたらに厳しく、又医師免許の業務範囲が広いのは日本だけと思うが、同じ生命に関する食品衛生法はおざなりである。私は国による制度の強化を言うつもりはない。もっと食品業界の各ジャンル毎に民間の意見を取り入れ、又その企業規模毎に民間で作る免許制度を作りそれを国が間接的に認める制度が必要ではないか、HACCPは元々NGOで決まるのが世界的であり、なぜ厚生省内にマル総的な考えが出てきたのかは考えに苦しむ。
 食品衛生法の中でHACCPの所だけなぜか考え方が異なり、一つの法の中に二つのスタンダードがあるように思える。
 私と有志の者が考えた新しいHACCP認証制度についての一案を下記に参考として加えておく。
 

HACCP民間認証制度ワーキングG

@民間認証の必要性に関する検討(三木氏アドバイスの件)
 民間認証制度の必要性についてはワークショップ時における経過説明用として作成する。  内容は各メンバーから提出されたワークシートの内容を整理して作成する。(前回と同様)

A認証の基準
 ・ソフト(運用)、ハード(施設)の両面を審査する。
 ・この基準はマル総と違って、認証レベルをランク分けして中小企業にも対応できるよう配慮する。例えばAクラス認証、Bクラス認証と認証のレベルを2〜3段階に設定し、管理レベルに応じた認証をおこなう。ただし、HACCPで必要とする必要最低条件は各ランクとも要件を満たすことが条件となる。
 ・当面、ISOの認証とHACCPの認証は性格が異なるので、混乱を防ぐため個別に行うこととする。

B認証団体となる範囲(なることが出きる組織)
後述の認定基準を満たすことを条件に全ての法人が対象となる。
 例)検査協会、検査請負機関、ISO審査登録機関など

C認証団体の認定方法と体制(組織)考え方の基本は次のとおりである。
 ・認定は認定を申請した団体、法人について(仮)HACCP協会が審査し、認定基準を満たした団体、法人について厚生省に認定を申請する。
  厚生省では(仮)HACCP協会の審査結果に問題がないことを確認のうえ、承認を通知し、登録する。
 ・保健所の食品衛生監視員は認証された企業におけるHACCP方式の運用状況を行政の立場で監視、指導する。監視の結果問題があれば、認証団体および企業に対し、改善の指示をおこなう。また、改善が認められない場合は厚生省を通じ、HACCP認定審査会に認証の取り消しを求めることができる。

  <申請者の認証>

<認証団体の認定>


 
 

DHACCP審査員の認定

  (仮)HACCP協会が主催する認定審査を受け、審査基準を満たした者について

   審査員として認定、登録される。認定された審査員は厚生省に登録が報告される。

   認定の流れは事業者の認証と同じ。

E(仮)HACCP協会の役割

 ・認証団体が認定基準を満足しているかの審査、認定

 ・認定基準の改訂に関する承認

 ・認定団体の認定の取り消しに関する審査

 ・HACCP審査員の審査、認定

*以上の@〜EについてWG内の意見の一致をみた