バカ漫画 其之参拾
「真・黙示録」
〔たちばな出版〕
(平成7年6月28日発行)
原作・深見東州
〔青山〕
画・小島剛夕/森義一
バカ漫画更新が滞りまくりで申し訳ありません。詳細はTOPで書いたとおり。mixi恐るべし。

バカ漫画の記念すべき30段目ということで、巨匠の迷作を用意させて頂きました。
死者を鞭打つシリーズのラストを飾るは、名作『子連れ狼』でお馴染み、故・小島剛夕先生。
これは紹介せねばなりますまい(MC・桂小枝)。しかも、それがトンデモ宗教漫画とあらばなおさらで。

その前に、このヘンテコ原作を描いておる深見東州(青山)氏と、ワールドメイトについて。
とりあえずWikipediaより。

深見東州(旧名:深見青山、本名:半田晴久)が創設した神道系の新宗教団体。

・以前(平成元年11月10日当時「コスモメイト」)は、宗教団体ではないと主張していたようです。
・幹部に、以前いいともでコーナー持っていた西谷泰人(肩書・手相鑑定士)も在籍しておりました。
「セクハラ」「脱税」・「霊感商法」などで訴えられております。
                 なんか、悪徳宗教団体では無茶苦茶ありがちな話ですね。詳細こちら
 ↑ワールドメイト側↑の主張ですが、すみませんが笑いました。セクハラ事件の和解金ではなく解決金なんだそうです。

以下、ワールドメイトの面白サイトを紹介しておきます。自己責任でご覧下さい。
 Http://www.tenshi-net.com/worldmate-fan-comic/1.htm
  ↑これはこれでツッコミどころ満載バカ漫画なのですが、ここでの紹介は略。

 Http://www.fukami-comedy.com/
  ↑夏の暑い日などに読めば、涼しくなること請合い。間違って冬に読むと凍死する恐れがありますのでご注意を。

氏の絶対零度ダジャレは、そのペンネームヒット集(全部たちばな出版刊)にも絶大な威力を発揮。
   『金しばりよ、こんにちわ(PN. フランソワーズ・ヒガン』 『パリ・コレクション(PN. ピエール・ブツダン
   『解決策
(PN. 三休禅師』 『悪霊おだまり(PN. 美川憲二』 『我輩は霊である(PN. 夏目そうしき

ちなみに、たちばな出版の代表取締役は深見青山半田晴久)氏その人です。自分とこで発行しておるわけですな。
ここに就職すると、こういう特典が付いてきます。そして独自の営業カーで走り回るのです。 本を買うとおまけもあります。



………さぁ涼しくなったところで、お待たせしました。本編に参りましょう。
この手の方々を相手にレビュー書くと後が怖いので、今回は画像はナシです。すみませぬ。

前後編合わせて、深見東州氏の人物史を描いた漫画です。
前半の『すめらあいす橘カオル物語』小島剛夕先生が担当。
後半の『み・ろ・く神話』は、森義一氏が担当しております。




『すめらあいす橘カオル物語』

前半は、ワールドメイト創始者にして開祖である橘カオル(現・植松愛子)の半生。
この人、深見東州氏のお師匠さんでも在らせられます。つまり、諸悪の根源むにゃむにゃ…

作品ですが、流石は劇画の第一人者だけあって、人物・自然・建物などの描き方は見事なものです。
しかし、この作品を違和感ありまくりにしておる最大の要因が、深見東州(青山)氏の原作で。
例えば、空襲のシーンなどもなかなかの迫力の絵なのですが、彼の原作にかかると
空襲=巨大グモ襲撃になってしまう。 いや、ホントに巨大グモが人間を襲ってるんですよ。

橘カオル「おかあさん、クモが! あそこよ、見えないの!? 人間を襲ってるの。怖いよう!」(P.12)


空襲を逃れ疎開した橘カオルは、これも幼少期の深見東州と出会っております。
つまり、二人の出会いは運命だったと言いたいわけですな。
深見東州との初対面のシーン。 しかし彼が乗ってきたのは、何と光り輝く円盤!!
円盤の下部から徐々に一条の光が降りてきて、そこには老神に連れられた幼い子供(東州)が。
ベタベタですしかし初めて見ました。剛夕先生の描く円盤(笑)

やがて成長した橘カオルは、結婚し子供を授かるのだが(この間、剛夕先生描く可憐なセーラー服姿あり)
交通事故により母と子を失ってしまう。絶望のどん底に叩き込まれたカオルは、何故か北へ。
会津磐梯山の小さな祠に祀ってある鏡の中で、これも成長した深見東州と再会を果たす。
老神に「神人合一の神法を会得せよ」(P.73)と言い含められたカオルは、下山した後
「神人合一の神法」を会得するため、七日間に渡って不思議な体験(妄想?)をすることとなる。

第一夜 北極老人が現れた!!(←北極星を主宰するご神霊)
 曰く「先天のキ胞これ老祖なり。森羅万象は先天のキ胞によつてなる……」〔P.81〕
第二夜 銀河の母・天母が現れた!!(←銀河宇宙の母)
 曰く西王母となり聖母マリアとなるなり。迷える子羊たちを救いなさい」〔P.83〕
第三夜 観世音菩薩が現れた!!(←阿弥陀如来の脇侍。大慈大悲で衆生を済度するのを本領とする)
 曰く「南海に遊び青山に至る。カオルよくぞここに至れり。遠く遠く近く近く我はおわすなり」〔P.84〕
第四夜 白隠禅師が現れた!!(←江戸中期の臨済宗の僧。名利を離れ、諸国を遍歴教化)
 曰く「動中の静、これ真空の妙なり」〔P.86〕
第五夜 臨済禅師が現れた!!(←当の禅僧で臨済宗の開祖。師の法語を集録したものに「臨済録」がある)
 曰く「即今目前に自己の本質を実現させ、刻々の只今に生きる。只今に生きるのじゃ!!」〔P.87〕
第六夜 うずめ観音が現れた!!
          (↑謎に包まれた観音であり、天・地・人の渦を手の上にもっている。神秘なる仕組みの神である)

 曰く「わしはうずめ観音なり……」〔P.88〜89〕
第七夜 〔ス〕の神が現れた!!
          (↑
(ス)の神ともいう。あらゆる次元の元の神であり、全知全能の神の御親である。)
 曰くの神、降臨せり。この場を皇大神(すめらおおかみ)と申すなり」〔P.88〜89〕

これ見れば分かりますが、古今東西ありとあらゆる宗教やら思想やらがごっちゃごちゃ
第一〜六夜のように、陰陽道やら道教やらキリスト教やら仏教やら禅宗やら一緒くた。
ここまで徹底的で無節操な他宗教の取り込みに関しては、あの幸福の科学をも凌駕するもので。
しかし、第七夜で分かるように、それに優越させる形で神道を乗っけておりまして、しかも
日本古来のアニミズムとは一線を画し、の神を頂点とした一神教的価値観となっております。
前述したバカ漫画サイト → Http://www.tenshi-net.com/worldmate-fan-comic/14.htm でも、
聖俗二元的な発想は確認できると思われます。〔他にも神道を標榜するも、実は一神教的なケースがこちら。〕

 さて閑話休題。これら「神人合一の神法」を会得しつつあった橘カオルさん。
白山神社に参拝にでかけたその時、悪鬼の化身である竜(ドラゴン)に襲われることに。
しかし、この。残念ながら剛夕先生にあるまじく下手!!
ワニの頭蛇の胴体。頭にひん曲がった牛の角四本をくっつけただけの代物です。

橘カオルさん危うし!! そこへ安直にも、深見東州が彼女を救いに颯爽と登場!!
カッチョいいぞ、深見東州!! 悪鬼(竜)との空中での大格闘!!
しかしこの絵面、ほとんどウルトラセブンvsナース(←こんな感じ)。
トドメは、ただ単に体当たりしただけ。 なのに竜は空中大爆発!!
そのまま空中に消えていく深見東州(ジョワッ!!)…なんなんだ(爆)

かくして橘カオルさま、「神人合一の神法」を見事に会得。
雲の上に乗りながら、それを優しく見守る深見東州と老神。……お前ら孫悟空か(笑)。

カオル「私には、そっと胸に秘めたある期待がありました。それは……
    あの清々しい若者と、現実の世界でいつか巡り合うことができる――という期待でした」

                                                         (P.143)
…そして、現実世界での再会の話(後編)に続く。 清々しい若者ねぇ……これがか?




『み・ろ・く神話』

後半部分担当の森義一氏は、ふた昔くらい前のエロ劇画タッチ
麻雀漫画とか描いておったようです。おや、『いなせ鮨(作・火野俊平/芳文社)』の作者ですか。
どちらにせよ、小島剛夕先生とのレベルの差は、残念ながら否めません。

話は、現実世界での橘カオル深見東州の出会いを描いた感動的なドキュメント(笑)

突如、姫様(?)の姿にコスプレ…もとい、変化(へんげ)したカオルが叫ぶ!!

 「さあ、これが銀河系宇宙の波動です!!」 (P.264)

ビビビビ・・・(←ねずみ男にあらず)と、手に持った杖から波動を放射!。
それを額に受けた深見東州さん、青年の姿から白髪白髭の老人「バン!!」と変化(へんげ)!!
それと同時に、突如、空が一転俄に掻き曇り、続々と襲い来る迫力のない悪鬼ども!!

深見東州「あたかも僕の力と橘先生の霊光が合体すれば、限りなく大きなパワーになる事を知って
      それを阻止するかのようにこの世の邪悪なるものが、一斉に襲いかかってきたのでした」

                                                    (P.268〜269)
襲い来るヘンテコな悪鬼どもを、バッタバッタと打ち倒し、仕込み杖でバッサバッサと斬りまくる
更なる波動ビビビビ…と受けた深見東州、今度は不動明王(らしき姿)に変化(へんげ)!!
迫力のない巨大な悪鬼(多分、ラスボス)を、手にした降魔の剣でバッサリと一刀両断!!
    この辺、『明王伝レイ』に似てなくはないのだが、おそらくはライバルの幸福の科学をパクるような真似はするまい。

むう、強い。強いぞ、深見東州!!
なお、ワールドメイトの方針としては、マイナスの霊があっても「除霊」するのではなく、
説得し、癒し、行くべき世界に帰す「救霊」を旨としているようなので、お間違えないよう
斬り殺しているように見えますが、あれは実は荒っぽい説得なのでありましょう。多分。

そして大団円。笛を吹きながら橘カオルと共に道を歩く深見東州。 その後ろから、
にこやかな表情を貼り付けた人々がハーメルンの笛吹きみたくゾロゾロと追尾していくのだった。

 「実在の神を掌握して、その神を行する神人合一の人
 時代時代に神の如き働きをして人類を救い導いた人々のように、あなたもなれるのです。
 目に見えぬ神仏と妙を体得し、目に見ゆる人々の道にかない、
 21世紀の社会をよりよくする…まさしく神の使者たる人――
 あなたも
ワールドメイト神人合一の道を学べば、そんな立派な人々になれるのです」
                                                  (P.285〜288)
めでたしめでたし(笑)





さて、この話もこれで終わりですが、最後に悲しいニュースをひとつ。

華別れ―小島剛夕遺稿集の中にある小島剛夕作品リストには

この傑作『すめらあいす橘カオル物語』は、
                 残念ながら入っていないようなのです。
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 ま、そりゃそうだ(←不謹慎)!!

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