バカ漫画 其之参拾弐
「中国入門」
やっかいな隣人の研究

〔飛鳥新社〕
(2005年8月15日発行)
画・ジョージ秋山
監修・黄文雄

(C)ジョージ秋山

バカ漫画32弾は、前回に引き続き歴史系ネタ。それも、物議を醸してころしそうな近現代史
でも、あまりにも内容がアレですし、作画は超大御所で敬愛するジョージ秋山先生ですし、
時期的にも、こういうの大流行しておりますからタイムリーですし。つくづく、芸人ですな>自分。


まずレビューに入る前に、地球上の人類について解説したこちらの文章をご覧下さい。
性格は攻撃的で、独善に満ちあふれ、差別意識の強さは他に類を見ません。
地位・見た目・金・肌の色・個性、ありとあらゆるもので同族を差別し、命を奪うことも珍しくありません。
自分たちの首をしめるのも好きですね。 自然にとって過剰な森林伐採有害汚染物質の垂れ流し、
未整備な原子力施設廃物不法投棄etc.. 
基本的に、出したクソは他人(ひと)まかせです。

非常に繁殖力旺盛で、年中発情し交尾可能です。
男女共に、一生の間で複数の異性と関係を持つのが一般的です。
    富樫義博『レベルE』AP.161〜162
コレ↑、どこか間違ってますか?

まったく間違ってるわけじゃありませんよね。 ただ、直後にサド隊員が的確にツッコンでます。
「 言い過ぎです。いくら何でも一部の国一部の現状一般化し過ぎです 」
つまり、黄文雄先生=クラフト隊長。『レベルE』の表現を借りると、逆仲人!!
仲人口と同様、話半分以下だと思った方が吉。先生、明らかに悪意・敵意がありますし。

ではまず、その黄文雄先生ご本人についての解説(Wikipedia)。
この方を歴史学者(それも台湾出身ですし、東洋史の専門家)だと思ってる方。それ勘違いです。
学歴は、早稲田大学商学部卒。明治大学大学院文学研究科博士前期課程修了。
専攻は西洋経済史(それも、マルクスとマックス=ウェーバー)
しかし書いてる本は、ほとんど専門外の東洋史(本人もそのこと講演会でネタにしてます)
西洋経済史専攻で、且つ東洋における陰謀を語るわけですから、やはりそこに登場しますは
闇の組織「フリーメーソン」ですよ!!(大爆 
            *参考 バカ漫画空手大戦争超人伝の中でもフリーメーソンは、ちょっくら紹介しております。

氏の著作罠に嵌った日本史の中では、フリーメーソンと中国(孫文・蒋介石・宗家三姉妹)との
闇の繋がりが6頁にわたって述べられておりまして、なかなかに読み応え(笑)があります。
 チャイナマフィアとして恐れられる中国の幇会(パンホイ)フリーメーソンとは
 
関係があるといわれているが、事実はあまり表に出ていない。(P.126)

 日本は大陸においてABCD包囲網に囲まれた…(中略)…この作戦において裏で糸を引いていたのは
 中国の政治経済を完全に掌握していたユダヤのフリーメーソン
だったと言われている。(P.127)

……むう、なかなかカッチョいい表現です。正しいかどうかは別にして。
はっきりと言えるのは、こりゃ間違いなく歴史学者の文章じゃありませんね
台湾ペンクラブ賞を受賞されておりますし、この人、小説家ではないかと。往年の五島勉みたく。
   *五島氏の名誉のために言っておきますが、文章力・説得力にかけては黄氏の方が遥かに劣ります念のため。
ちなみに、現在の氏の著作にはフリーメーソンは登場しなくなってしまいました残念です。
わざわざフリーメーソン登場させなくても、陰謀は中国が一手に引き受けてくれるからでしょう。



さて、本題に入りましょう。まずこの本を一読してみて一言。
ジョージ秋山先生、手ぇ抜き過ぎです(涙)
背景真っ白
 線も荒れ放題、絵も超絶簡略化
この作品、はっきり言ってやっつけ仕事じゃねぇかという気がヒシヒシと。
                                            てゆーか、本人が描いてるのかな、これ?

こんな手抜きの絵で、個人的に大好きな魂のふるさと『デロリンマン』は見たくなかったな。


絵もそうですが、引用されておる写真も、かなりいい加減なシロモノです。
まず、P.50〜51の写真の背景に使用されております新聞記事。
「2003年10月29日、陝西省西安市西北大学で開かれた
 『文学の夕べ』という学芸会で、日本人教師一人と
 留学生三人が、赤いブラジャーをつけて踊り、
 …(中略)…卑猥な寸劇を演じた」
「『これが中国人だ』と書かれた札を首から掛けていた」
「中国人学生からは『中国人を侮辱した』と解釈されて
 学生デモが起こり、留学生宿舎前で謝罪を要求」
P.51

「珠海日本人集団売春騒ぎに続いて
 またまた日本人ハレンチ事件」
P.50

 
あたかも、背景となっている新聞記事の訳文のように見出しや解説が書かれておりますが、
  これら全部、事件とは無関係な記事です(爆!!



それから、朝鮮戦争に触れたくだり(P.168〜169)では
 中国は1950年に勃発した朝鮮戦争に人民義勇軍を派遣し、戦争に参加した。
 参戦の理由は、北朝鮮政権崩壊を阻止するためだ。この戦争で、毛沢東の人民戦争戦略がとられた。
 …(中略)…半端でない人海戦術に圧倒された韓国支援側の国連軍は、戦線を後退した。
 目的のためなら人命の犠牲もいとわない中国軍。しかし、この人海戦術も補給線に限界があった
んで写真ドンッ!!
                    (P.170)
どういう訳だか旧日本軍の
九四式軽装甲車 !!

何ゆえ、朝鮮戦争の話題にこの写真が?

「それを見越した連合軍は
 中国軍の攻撃が一通り終わり
 戦力が弱まった頃を見計らって
 最新兵器で猛攻撃をしかけた。
 
旧式武器しか知らなかった中国は
 最新兵器の威力をはじめて体験した」

コレ、明らかに最新兵器じゃありません。
もしかして、中国軍の旧式武器の象徴として
わざわざこの写真を持ってきたのでは?

それなら納得………しなくはないけど、
なんか、ムカつくぞ。
〔確かに旧式弱小兵器ではあるけども〕



そして内容ですが、決して間違っちゃいないけど正しくもない記述のオンパレード。
細かな部分をピックアップすれば………やっぱり間違いだらけですねこれ(笑)。
    第三章 中国政府反日の歴史 
     一. 戦後中国最大のヒット作『南京大虐殺』


       〔前略〕

 「南京大虐殺」とは本当にあったのか。教科書で言われていることは果たして真実なのか。
 これについては肯定派と否定派が今でも対立し、確証はまだない。
@
 肯定派の中からは
「百万人虐殺説」まで出ている。A
 当時の南京の人口は二十万人であるのに、どうしたら百万人を虐殺できるのだろうか。

 日本軍が南京に入場したあとは、南京の人口がなぜか三十万人に増加していた。

 この虐殺の数の矛盾をめぐり、中国共産党は協議の結果、「三十万人以上」と決めた。
B
 これについては、中国の学者が「鉄証如山」として、日本に承認することを強制している。
C

                       (確たる証拠は山ほどあった)
                         (P.73〜75)

多少なりとも南京虐殺論争に理解のある人なら、すぐにお分かり頂けると思いますが、
もはや、論争の初歩の初歩レベル。全文(てゆーか、一行ごとに)ツッコミ所だらけ。
いま時、中高生でも、もうちとマシな論陣張りますぜ。

  @ 対立してるのは、多数説・中間説と少数説。  否定派は、学説上歯牙にも掛けられてない。
    否定説を唱えているのは、専門外の学者や素人。流行ってるのはネット内のみ。 あ、政界もですね。
    少なくとも、こういう質問・疑問を呈するような人は、
否定説(トンデモ)に分類されますのでご注意を。
  A 誰が主張してるんだ、こんな説(笑)。 主張してる人物とその内容を、具体的に。―→解答
    しかし、
中国政府ですら主張してない数を以て中国を批判するとは、なかなかの度胸です>先生
  B 犠牲者数
「三十万人以上」との判決出たのは、南京軍事法廷です。その判決を下したのは中国国民党
    数字を受け継いだのが中国共産党。共産党も国民党もごっちゃごちゃ。何ですか、「協議の結果」てのは(笑)
  C 主張はしても強制はしてません。現に、日本の学者で「三十万人」説を採る人ほとんど存在しませんし

そこで、満を持して黄文雄先生が持ち出す南京虐殺の真実とは、これですよ。
  『東晋以来の中国歴代王朝による南京虐殺からのコピー説』(P.75)
      日本側にも虐殺を示す史料があるのですが、そういうのは視野にも入らず華麗にスルー。
P.76〜78
 中国では歴代王朝が交替するたびに京師(都)での「屠城」(兵士による城民の大虐殺)と
 「市民による共食い」が繰り返されてきた『正史』『資治通鑑』などの記録に残っている。


毒薬仁太郎
   梁の武帝の晩年に起こった南京大虐殺なんてよ、
   百万人いた市民が六万人しか残らなかったんだって。
   もっとひどい虐殺記録も残ってるんだぜ。

 近代で有名なのは太平天国(1851〜1864)が崩壊する際の、曹国センによる「天京(南京)大虐殺」と
 辛亥革命後の張勲による南京大虐殺である。曹国センは1864年7月19日に南京を攻め落とした。
 『能静居士日記』(趙分烈・著)の「天京大虐殺」の章に詳しい。
 それによると、湘軍による
虐殺・暴行・放火・略奪などが一ヶ月も続いたという。
 南京城では虐殺のたびに市民の共食いが発生した。中国史では「兵屠」と記されている。
 太平天国の時代は、敗れた敵兵が喰われる対象であった。そして、中国が主張している南京大虐殺…


小泉首相(当時)
    分かっていますよ。中国は歴代王朝が繰り返した大虐殺をコピーして
    日本軍も同じようなことをやったんだとでっち上げたんですよ。
…………
まず、一つ言えること。黄文雄先生を除いては、
こんな説を採ってる学者は誰一人おりません。

当たり前です。王朝が交替するってことは戦争があるわけで、その際に虐殺が起きるのも当然。
そこから導き出されるのは、かつて中国人が虐殺したことがあるという結論だけで、
日本軍が虐殺していないという結論には結びつきません。論理が相当飛躍してます。

ついでに言えば、黄文雄先生。P.90でこんなこと言っておられますが、
 中国の伝統的史観では勝者のみが歴史をつくれる。敗者はおとなしく受け入れていればいい。
 中国は勝者なのだから、歴史を勝手につくっていい。日本はそれに従っていればいいのだ。
だったら上記の歴代王朝による虐殺の記述も、勝者がつくった歴史だとか考えないものでしょうか。
現王朝が自らを正当化し、前王朝がどんなに極悪かを証明するため勝手に歴史をつくった、と。
つまり、前王朝が虐殺の記述を大袈裟に誇張した、というように考えが至らないものかと思うのですが。
実際、日本軍による南京虐殺の中国側主張の犠牲者数30万人も、誇張されてるとは思います。
           (もうちょい正確に言えば、そもそも虐殺の定義が異なるので、日本側の研究と同列に扱えない)
でも、白髪三千丈のお国柄などと批判する人でも、かつて中国が行なった虐殺の記述だけは、
  何の批判もなく受け入れるんですよね。 どして?
東晋以来の中国歴代王朝による南京虐殺が、誇張されてないと、どうして言い切れるのか?
                     てゆーか、実際こういう記述って、かなり誇張されてるんですが。

そう考えたら、中国歴代王朝による虐殺否定論でっち上げるのも可能なんですよね。
「百万人いた市民が六万人しか残らなかった」  とか文献にはあったとしても、
統計的根拠がなければ、証拠にはなりません。正確な犠牲者数は分かりませんよ。
いや虐殺はあったかもしれませんが、極めて少数だったかもしれないでしょ♪
第一、そう記述してるのは後の王朝の人ではないですか。誇張ですよでっち上げですよ
(誰か主張してくれませんかね。
中国歴代王朝による虐殺否定論実は中国では虐殺は存在しない説
東中野修道先生なら、その道のスペシャリストですし、十分に可能だと思うのですがw)

ついでに言えば、大袈裟・誇張した表現というのも、中国だけの専売特許じゃありませんし
黄文雄先生による中国の歴史や現状に関する記述は、一事が万事そんな感じ
細かい間違いやら、中国に負けず劣らずな大袈裟に誇張した表現やらが多数見受けられます。
                       逐一、レビュー書いていくのも面倒なんで、ヒマがあれば列挙するかもしれません。





更に、中国人の残虐性を強調するため、20頁ほど費やして中国での人肉食について
それはもお嬉しそうに
延々と食事中の小泉首相(当時)に語りまくる黄文雄毒薬仁太郎
内容が、桑原隲蔵の『支那人間に於ける食人肉の風習』『支那人の食人肉風習』や
 井波律子『中国のグロテスク・リアリズム』からの剽窃とかいうのは、ひとまず置いといて。
               (注・桑原隲蔵も、学問の世界では一面的・短絡的との評価をされております。念のため)

こういうカニバリズム(Wikipedia)は、人間心理(少なくとも文化人類学的な)の面から考察すべきでしょう。
大昔の、それも凶悪な事例だけを積み重ねて、今の中国人も残忍だと決め付けるような手法って、
印象操作って言うんじゃないの?
某新聞の印象操作に過敏に反応する人なら、こういう印象操作にも過敏に反応しましょうね。

確かに、中国に人肉食の記述ある文献は少なからずありますが、その大部分が飢餓によるもの。
各王朝の末期にもなると戦乱と飢饉などにより、深刻な食糧不足になっておるからでありまして
食う物が極限まで無くなれば、そりゃあねえ。 ちなみに、P.156〜157でも以下のように書かれてます。
 唐の末、黄巣の乱により黄巣が長安に入った頃、民衆はすでに貧困にあえいでいた。
 食糧不足はいかんともしがたかった。人々は生き延びるためには手段を選ばなかった。
 兵士は市中で掠奪・放火・殺人を繰り返し、腹が減ると木の皮を削って食べ、
 
人肉まで食べて飢えをしのいだ。耕作をする人がいなくなり、加えて飢饉のひどい年であったので、
 ほとんどの人間は
人肉を喰らい年を過ごした。その混乱は空前のものであった。  「唐書」昭宋本記
………ホント、酷い状況です。
絵にすれば、こんな感じでしょう。

          ・                (注・残酷画像)
          ・
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          ・
  あ、ごめんなさい間違いでした。
これ、ジョージ秋山先生の大傑作にして大問題作 『アシュラ』 冒頭部分。
で、豪快に人間を喰ってます。

直後に有害図書指定も喰らって、 マガジン回収騒ぎになったりしてます。
しかし作品自体は、(この本と違って)非常に面白いです。考えさせられます。一読をお勧めします。
この作品、中世の日本が舞台ですが、「唐書」昭宋本記に描かれた惨状とそっくりそのままです。
人間、極限状態になれば、理性もモラルも吹っ飛ぶものですな。日中問わず。
しかしまさか、ジョージ秋山先生の絵で、再び人肉食が見れるとは思わなかったよ西手新九朗


いや、飢餓とは関係なく戦争相手への敵愾心を煽るために、敵兵の肉を食べていたではないか
と言われる方も多かろうと思います。これもその通りです。日中問わないのも。
    (あと、「敵の肉を喰らう」てのは、恨み骨髄なのを示す慣用句でもありますので、額面通り解釈するのもどうかと)
半藤一利・保阪正康 『昭和の名将と愚将』 文春新書 P.190
半藤  もうひとつだけ辻の酷い行状をつけ加えておくならば、終戦直前の、敗走のビルマ戦線で
他人にも強要した人肉食用です。かつての上司で辻をよく知る元関東軍参謀・
片倉衷(ただし)
(以下のように)書いています。
  辻は敵を凌駕する勇気を養うため、英兵の生肉を食用に供させた……
  この点について、真っ向から筆を取って辻を書いた者はこれまでにいない。
  だが、いくら悪戦苦闘の戦陣中とはいえ、参謀勤務でありながら、
  自分ばかりでなく、他人にまでそうさせたことは、人間として私には許せない。


秦郁彦 『昭和史の謎を追う(下)』 文春文庫 P.262〜268 より
 最初の人肉食事件は1945年2月23日から25日までの間に起こりました。
 当日私は司令部に赴き立花将軍に飛行士は末吉隊で処刑されるべき旨を報告しました。
 司令部で酒を出され、話題はブーゲンビルやニューギニア駐屯の日本軍のことに移り、
 食料の備蓄及び供給が絶えたる部隊は人肉を食せねばならぬという話が出ました(中略)
 そこへ加藤武宗大佐(独歩三〇七大隊長)が我々のために設けた宴会に来られたいとのことで
 赴いたところ、酒も肴も十分にないことが判りました。このために、将軍は不満足で、
 何か肉類の食物をもって多量の酒を得られる所はないのかという話になりました。
 将軍は私に処刑のことを尋ね肉を手に入れられないかと訊ねました……肉と甘蔗酒一斗が届き、
 
肉は加藤大佐の部屋で料理され、その座に居合わせた者は全部少しずつ味わいました。
 勿論誰一人美味かった者はありませんでした。         
極東軍事裁判・法廷証2056A
 いささか舌足らず気味な陳述だが、引用を省略した部分もあわせて判断すると、人肉食の動機
現在の食糧不足ではなく、将来の予見か戦意高揚または単純な好奇心にあったことがわかる。



 グアム島裁判にはこの時、的場が出した次のような口頭命令が証拠として提出されている。

   一、大隊は米人飛行家ホール中尉の肉を食したし
   二、冠中尉は此の肉の配給を取り計らうべし
   三、坂部軍医は処刑に立会い、肝臓、胆嚢を取り除くべし
              1945年3月9日 午前9時  大隊長 陸軍少佐的場末勇
  発令方法……冠中尉並に坂部を面前に呼び口頭命令、報告は立花旅団長へ、通告は堀江参謀へ

 (中略) 寺木は言われたとおり、斬首され絶命したホールの死体を教材として衛生兵たちに内臓の
デモンストラチオンをやり、キモを切りとった。その夜、三〇八大隊の全将校は防空壕内の部隊長室に
召集され、ホール中尉の試食を目的とする大宴会となる。



 グアム島の米海軍による軍事裁判は、五月から九月まで半年かけて進められた。父島関係の被告は
立花中将以下の25名(別に証人43名)で、トラック島の捕虜生体解剖など中部太平洋の各地で起きた
諸事件を加え、計63名に達した。
 もっとも注目を集めたのは父島事件で、凄惨な証言が次々に登場した。
中将の当番兵が人肉を供した酒宴のようすを述べ、立花が 
「これはうまい、お代わりだ」
と要求したくだりになると、法廷は水をうったようにシーンとなってしまった。


更に付け加えれば、黄文雄先生の故郷。台湾人による食人の文献もあったりするのですが。
武田雅哉 『<鬼子>たちの肖像』 中公新書 P.188〜189 より
「潘食倭肉」之図
 倭奴は中国を蔑視し、要求をほしいままにしてきた。
 前線の将軍たちは、あえて勇敢に戦おうとせず、
 そのために今回の台湾割譲という事態になってしまった。
 みんなががっかりして、その肉を喰らい、その皮に寝たい
 と思わないものはないのだが、その願望をかなえたのが、
 台湾原住民の生蕃
(せいばん)なのであった。  『点石斎画報』
 「生蕃」とは、文化の涵養を経ていない蛮人のこと。
かれらは、倭奴と見るや、ブタやヒツジのように、その肉を裂いて
その場で喰らったり、あるいは持ち帰ってスープの具にしたりする。
彼らによれば、
「倭奴の肉は臭みがあるが,美味い」のだという。
これまでも何度か用いられてきた、倭奴への憎しみの深さを表現する
「その肉を喰らい、その皮に寝る」 を、文字どおり実行に
移してくれたのが、台湾の生蕃だったというわけである。
   日本兵、喰われてます↑↑

ちなみにこの書籍の著者・武田雅哉氏は、この記述の少し前(P.186)に、
 「中国の史料には (中略) 改竄の手が加えられることが、しばしばある」 と書いておられます。
 「ぼくは新たに刊行された『史料』なるものについては、ただいまの諸事情によって『創作』された
  『文学作品』であるとみなして、寛大このうえない心で鑑賞し、楽しむことにしている」
 とも。
しかし、黄文雄先生などは中国の史料(それも古典)を、まんま信用されてるのでありますから、
上記台湾原住民による倭肉食も、先生の厳格なお立場からはまんま信用しなくては(笑)
あと、蛇足ですが、フィクションを以て
人肉食批判(P.162)するのは如何なものかと。

特に『西遊記』だと、相手は妖怪なんで、
人間様のモラルは通じないのではないかと。
てゆーか、こんなので批判された日には、
日本の二次元世界でもNGな作品多数

  古くは安達ヶ原の鬼婆とか酒呑童子とか。
  特撮だと、ガイラとか、ギャオスとか。
  新しくは、仮面ライダー響鬼魔化魍とか。
  漫画だと、『幽遊白書』とか『寄生獣』とか。
     おまけに、アレだとかコレだとか。

現代に到るもあんな人肉を喰らうなどという
残酷な表現を用いる日本人は野蛮、てことに…



いや、この本にも納得できる部分が、ないわけじゃないんですよ。
小泉首相を前に、中国の悪口現状を懇々と語りまくる黄文雄先生(本人)の言。
 青少年に多くみられる傾向の一つに自己抑止力の欠如があります。
 
自己中心的な性格が非常に目立っており、その背景には
 
一人っ子政策の影響と愛国教育による中華思想の回帰があるようです。
 
一人っ子政策によって過保護に育てられた子供達は大きくなるに従って
 
自己の欲求を抑えられずに犯罪に走るケースが多いんです。
(P.254)

この部分は、確かにその通り。慧眼だと思いました。
ただ、これも別に中国に限ったことでありませんが。

一人っ子政策少子化 と言い換えても、充分に意味は通じるんですよねこれ。
例えば、お隣の韓国でも少子化は、日本以上に進行してますし教育はアレですし。
しかし、我が国でも少子化進行しまくり。教育制度はまだマシですが、半強制的に詰め込まれる
面白味のない義務教育よりも、好奇心で見るネット情報の影響もそれに勝るとも劣らないと思われ。
……んで、リアル愛国戦隊大日本なサイトは、ネットの中に山ほど見受けられますし。
ぶっちゃけ今の状況。日中韓による中華思想 同士の罵り合いに見えて仕方ないんですよ。

あと、今の日本の政治家さんって、世襲議員とか多いじゃないですか。それも無茶苦茶に。
政治資金規正法ザルだった当時の、しかも与党議員の息子なんざ、
うちら一般貧乏庶民からすれば、やっぱ金持ちのボンボンですよ。
現に、某都知事の息子たちとか、過保護に育てられた子供達にしか見えませんし(笑)
   (ちなみに某都知事の現行不一致の過保護な教育方針は、『トンデモ本の世界R』P.52〜61参照のこと)

先生の言が全面的に正しければ、 過保護に育てられた子供達である日本の政治家は、
愛国教育による中華思想回帰して、自己の欲求を抑えられずに犯罪に走る
…ということにわけですな。わはは、何てリアルな(笑…えませんねコレ

あと、気になったのがP.251〜252で小泉首相に黄氏が迫るシーン。
 「あんた…わたしの本、読んでないでしょ。十冊も送ったのに!
  読んどけば、中国なんかに翻弄されることないはずだ!」
……………

任期後半の首相の過激な言動とか見てて、少々不安だったんですよ。
……まさか小泉さん、こんな本、読んでたの?と。
前首相は、読んでませんよね?




さて。最後になりましたが、個人的には黄文雄先生の評価を決めかねているところです。
つまり、黄文雄先生の目的は何なのか。その正体はどういう人物なのか。

 ★心の底まで日本に染まり切った、超絶な自虐的台湾人
 ★そういう風に見せかけている、実は真の
愛国的台湾人

こういう本を大量に出してるわけで、そのスタンスは親日を通り越して媚日なのは間違いない。
しかも、『台湾は日本人がつくった―大和魂への「恩」中華思想への「怨」』、
『日本人が台湾に遺した武士道精神』、『台湾は日本の植民地ではなかった』
などなど、
台湾の愛国者(てゆーか、国粋主義者)や、日本に侵略された当時の世代から見れば、
激怒しそうなタイトルの本が並んでおりますし、極めつけはあの地図(P.98)ですよ。
日本(それも昭和初期までの)を愛するが故に、台湾人としての誇りを忘れ果てて日本に媚を売り、
自分の愛するあの頃の日本に戻そうとしている自虐的台湾人。表面上は、そうとしか思えません。

しかし反面、黄文雄先生って台湾独立建国連盟日本本部委員長なんですよね。
そんな立場の人が、「台湾が日本に侵略され、統治されたのが正しい」みたいな主張するかな、と。
この本の中でも中国を非難してるんだか、日本をバカにしてるんだか分からん部分もありますし。
そこで思いついたバカ仮説(笑)黄文雄先生の隠している真の目的は、
    「日本を利用して台湾独立を実現せしむる」
日本と友好関係を保った上で、日中を敵対関係に仕向け、そのドサクサに紛れて独立を宣言する。
これなら台湾は少しも痛みません(傷つくの日中だけ)国益に合致します。戦略的に正しいです。
こんな売国的主張をしている先生の元に、台湾の愛国者からヒットマンが送られてこない理由も分かろうというもの(笑)


多分、前者で間違いないと思うのですが、陰謀論っぽい後者も捨てがたいんですよね(笑)。
もし後者だとすると、台湾独立のために踊らされる日本人てなマヌケ極まる構図になりますし、
口先三寸で自国の利益になるように、一つの国家を躍らせるの、無茶苦茶格好いいですし。
まぁどちらにせよ、別に中国を嫌うのは自由ですし批判するのも結構ですが、その根拠は正確に。

少なくとも、こんなトンデモ
 踊らされるようじゃ論外ですよ♪

このレビューを書くにあたり、黄文雄先生と同じ早稲田大学卒の友人に監修を頼みました。
先生と違い、残念ながら(?)その友人、史学科(中国近現代史)専攻です。
多謝であります。(正確には、監修はまだですが)

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