平成14年12月議会一般質問
    安田優子 一般質問


1.中海淡水化事業中止について

 ご案内のとおり、島根県知事の注視表明に続いて、12月9日片山知事が中海淡
水化事業中止を表明されたことによって、13日には大島農水大臣から正式に事
業終結宣言が出されました。昭和63年の淡水化試行凍結から実に14年を経過し
ての中止決定であります。戦後の食糧難から端を発した干拓・淡水化事業の計
画・実施に費やした30年の歳月と合わせればおよそ半世紀に及ぶ世紀の大事業
でありました。私にとりましても、自分自身の人生と重なったこの事業と、折々の
場面を思い起こして、今、感慨深いものがあります。
 スタート時点では食糧増産という当時の切実な住民要望から始まり、「昭和の国
引き」ともてはやされたこの事業が、時代の流れ、価値観の変化とともに悪の権
化のように扱われていきました。物事に絶対ということはない、価値観は時代状
況とともに変わるということを学ばせてもらいました。
 今回の事業中止に至った最大の要因は、干拓堤防の締め切りによる中海の汚
濁ということにあります。かつては海底まで透きとおり、モンバが揺らぐなか魚貝
類の宝庫であった中海は、今や見る影もありません。
 県境を越えた巨大国営事業として、永い歳月と総工費851億円を費やしたこの
事業で我々が得たものはなんなのか、失ったものはなんだったのか、改めて総括
しなければなりません。浄化を求めて干拓淡水化を中止する一方で、中浦水門や
干拓堤防を利用しての交通アクセスは、圏域の人々の生活に深く入り込んでおり
ます。こうした現実をしっかりとふまえて、中海の治水浄化という次なる目標に向
かっていかねばなりません。
 昭和63年5月、淡水化について鳥取県から意見を求められていた本市が「淡水
化試行は延期することが適当」という誠に勇気ある先駆的決断を下したことが、
今回の事業中止を迎えるにいたったことを思い起こすとき、先人の意を受け継
ぎ、今後とも引き続き治水浄化に向けた運動を継続発展させていかねばならない
と考えるものであります。
 我々市議会がかねてより訴えております「交通に支障のない形での堤防開削」
要求の見通しについて、黒見市長の御所見を求めます。

 また、この淡水化中止に至るまでの間、最もご苦労をおかけしたのが淡水化を
前提として入植された中海干拓地営農者の方々でありました。
 懸案の代替水源については、渇水期における工業用水の活用をセットにした米
川の有効活用というかたちで決着がついたわけですが、これが現実に確保され
るためには、市長がいわれるとおり今後の施設整備が保障されねばなりません。
営農者の方々のこれまでのご苦労に報い、安心して農業に従事していただける
よう、干拓地造成を無にしないよう最大限のご努力をお願いするものです。

 同時に、本市の農業にとって改めてかけがえのない水源となった米川について
は、米子空港滑走路延長に伴うJR境線の地下化工事によって、その機能が損な
われることのないように万全の体制をとっていただきたく重ねてお願いをし、市長
の答弁を求めます。


2.合併問題の方向性について

 この問題については、去る7月2日に市長から本議会に対して、合併協議会設置
についての申し入れを受けております。
 その後、単独案についての住民説明会を経て、8月には3,000人アンケートが
実施されました。この結果については、すでに皆さんご案内のとおりであります。
 9月議会においては、このアンケート結果を根拠として、市民の反対が多いの
で反対であるという意見が多かったのですが、結論を出すにはいたりませんで
した。その理由について、合併問題調査特別委員会の水沢委員長は、次のよう
に語っておられます。黒見市長が特例市構想を呼びかけているのに周辺の町か
ら答えがなく、アンケートの結果市民は合併に反対なので結論が出せない、とい
うことであります。その後何の討論もないまま、今議会において市長より申し入れ
のあった合併協議会参加についての最終判断を下さねばならないということにな
りました。
 私は、これまでの合併問題に対する問題点を明らかにするとともに、今後の方
向性について私見をのべさせていただき市長並びに議員の皆さんのご理解をい
ただきたいと願うものであります。
 最初にアンケート結果についてであります。9月議会でも申し上げましたが、改
めて、私の見解を述べさせていただきます。合併反対が多かったのは、平成14年
8月という時点における市民の率直な意見であろうと思うのです。できるものなら
街を残してほしいという思いであり、願いであり、期待感ではないでしょうか。しか
しながら、現実の問題として考えれば、気持ちは気持ちとして一方では合併協議
の道も探っておかねばならないのではないかという市民のバランス感覚の現われ
が協議会設置賛成64パーセントの数字ではなかろうかと思うのであります。
 もしいわれるように、このアンケート結果をもとにして合併の是非を判断し、市民
が反対だから議会も反対というのであれば、今般問われている合併協議会参加
についてもこのアンケート結果に準じなければなりません。
 合併協議会は合併を前提としたものとして捉え、設問の仕方が悪いという意見
もありますが、合併協議会については、「合併の是非を含めて」協議する場として
地方自治法に基づき設定されているものでありますし、全国のこれまでの事例か
らしても合併協議会に参加することと、合併することは必ずしも一致するものでは
ありません。
 市長が提案されているのは終始一貫して、合併協議会への参加ということであ
り、9月議会において合併と協議会は別であるという認識を示しておられますが、
それは参加が想定される市町村の理解が得られていると判断してよろしいでしょ
うか。改めて確認をしておきたいと思います。
 私は、9月議会において、我が境港市は中海圏域の大同団結という将来展望
をもって、米子市に吸収されるのではなく、新しい街をリードして次の時代を目指
していく、そのような気概をもってこの合併に臨むべきであると述べました。その
当時は定かではなかった周辺市町村の動向も徐々に明らかになって参りました。
米子市長は、9月の中海テレビのインタビューに答えて、米子市と境港市の協議
会ができれば入るところはある。全て境港市待ち、と語っておられました。まさに
舞台は整いつつあるのではないでしょうか。
 黒見市長は、合併協設置の可能性、枠組みについてどのように把握されている
のでしょうか、お示しを願います。

 私は9月議会の後、多くの市民と合併問題について話をするなかで、このアン
ケート時点では反対だったがその後の情報提供等で考えが変わったという意見
をたくさんお聞きしました。また、アンケートをもらったがなんと答えてよいかわか
らなかったとか、ほかの人に代わって記入してもらったとかいう実例も多くありまし
た。さらに、3,000人のうち回答者が51パーセントで、そのうちの反対44パーセン
トといえば700人にも満たないが、それでこの大問題を決していいのかというご意
見もありました。私を含めて何人かの議員や団体等が新聞折込でそれぞれの意
見を訴えたり、理解を求めたことによる変化というものもあったと受け止めており
ます。こうしたご意見のなかで私が最も頷いたのは、アンケートで合併への取り組
みを終りにしないで欲しい。継続して取組んでもらい、自分たちも考えさせてもら
いたいという声でもありました。先日も中浜校区で市民の自発的な勉強会がもた
れましたが、この先もこの問題に真剣に取組む市民のお立ち上がりに期待するも
のであります。
 さて私は、9月議会においてこの合併問題に対する市長のリーダーシップを求め
たのでありますが、その後においても何の取り組みもなされないまま、全てを議会
の判断に委ね、議会はただ一回のアンケートにこだわって、何の討論もないまま
今日を迎えてしまいました。その結果、市の内外から市長、議会に対する不信感
が高まっていることは誠に残念なことであり、合併の如何を問わず、本市にとって
大きな汚点を残すことになるのではないかと心底憂うるものです。安田貞栄前市
長は、人に人格があるように街にも品性が問われる。他の街から畏敬の念をもっ
て見られるようにと、「公明正大、風格ある境港市」を標榜しましたが、今やその
志は地に落ちたといわざるをえません。我が境港市は今、舵取りのいない難破船
のように波間を漂っているのではないか、行政はあれど政治なしではないかとい
いたいのであります。政治は住民のために、市政は市民のために存在機能して
初めて評価されるものであります。
 そもそもこの合併問題は、地方分権における基礎自治体のあり方を指し示すな
かから生まれたものであり、これまでの国の末端組織としての地方自治体から、
自立した住民主体の自治体へと体質改善を図ることを狙いとしております。最も
大きく変わることを求められているのが首長で、国や県にお伺いをたてるのでは
なく、はっきりと住民の側に立つ存在として位置づけられています。
 このことは合併の是非を問わず、今現在、合併問題にどう対処するか、どう向
き合うかはっきりと求められていることでもあります。市長の対応がこれまで不十
分、問題ありとするならば、我々議会の側から厳しくこれを求めていかねばなり
ません。私は、非常に大きな歴史的使命をもった本議会において市政のあり方、
市長の政治手法の転換を強く求めるものであります。
 合併問題は、これまでの歴史的経緯から見ても、現在の全国の動向を見ても
それぞれの街にとって非常に大きな重大な問題であって、これにどのように取組
んでいくかは子々孫々末代に至るまでその街のありようを形づくっていきます。災
いや争い、確執を後の世に残さず、かつ新しい時代に見合ったやり方、即ち住民
参画の手法をどのようにこの問題解決に取り込み、いかしていくかが最大の課題
であろうと考えます。
 これまで黒見市長のやり方にはこうした発想が見受けられなかった、合併問題
でそのことが表面化したのではないかと残念に思うとともに、この機会に是非とも
発想の転換、市政のありようを変えていただきたい。そうでなければ、合併の是
非を問わず、この先我が街にとって、市民にとってまさに冬の時代ともいえる厳し
い状況に対応できないからであります。

 市民とともに合併問題に取組むためには、まず市政の現状を市民の前に明ら
かにすることが何より大切なことでであります。

 この間に13年度の決算報告がなされ、14年度の財政見通しもほぼ明らかになっ
た。今は、15年度予算編成に入っている段階ですが、大変厳しい状況にあるとい
うことを市民に対して率直に伝えるべきであります。そして、先に示された単独案
の財政見通しについて見直す必要があるのではないかと指摘するものでありま
す。
 市長は、この度の市政概要報告において、本年度予算額に見合う市税収入の
確保が困難になったと述べておられます。15年度予算編成については、これまで
の歳出中心の財政手法から歳入規模に見合った財政構造への転換を図る旨語
られました。そのような予算編成を実施するとき重要になるのは歳入、特に市税
と地方交付税をいくら見積もるかということではないでしょうか。私は、かねてより
単独案の歳入見込みが高すぎる、市税収入がこれまでのように39億とみることに
疑問を呈してきましたが、仮に年間1億違えば10年間で10億円の見込み違いとな
ります。地方交付税については、特別交付税に関し不透明な部分が多く読み取る
ことは不可能でしょうが、単独案の平成23年度までに47億円不足、うち行財政改
革で44億円を生み出す、従ってマイナス3億円という結論はどう考えても甘すぎる
と思います。また歳入を見まちがえて予算を組めば、結果として市債を増やした
り、基金を取り崩すことになり、見通しそのものが来るってきます。合併議論の前
提となっているこの案について早急なる対応を求めるものです。

 加えて15年度を待たずして既に開始された厳しい行財政改革についても述べ
ねばなりません。本議会に提案された下水道料金の値上げ、市民プールや海と
くらしの資料館、サウナ料金等応分の受益者負担という名目での値上げが何を
物語るのか、市民の前に迅速かつ真摯に明らかにする必要があるのではないで
しょうか。これまでのように改革によって生み出した金額を市民福祉のために回
すなどといった次元の話ではないのであります。実情をはっきりと説明しなければ
なりません。その上で市民の理解と協力を得なければ今後の改革はまさに絵に
かいた餅になる危険があります。
 私は、こうした本市の状況を市民に率直に伝えることから、再度合併問題を問
い直していかねばならないと考えるものです。そして合併を選ぶのか、単独でいく
のかは最終的には市民自らの判断に委ねるべきであると考えるものです。即ち、
住民投票の実施であります。本来であれば、この合併協議会加入についても住
民投票という考えもあるのですが、現時点においてはそのような時間的余裕もあ
りません。
 残されたチャンスとして今、我々議会にできることは、これまでの反省に立って、
この合併問題にこれからどう対処していくかという道筋をつけることであり、今次
合併の最大の狙いともいえる地方分権、住民参画をこの問題解決にあたってど
のように担保保障していくのかという極めて高度な政治判断ではなかろうかと存
じます。
 私は、市長から提案されたこの合併協議会参加の道を議会が閉ざしてしまうが
ごとき暴挙だけは絶対に許せません。自分たちの住むこの街の実情についてさら
に市民にご理解をいただくとともに、この街のあり様や進路について決定していく
場を私たち議会が奪うことになるからであります。単独か、合併か、どの道を選ぶ
かは市民一人一人に関わることであり、自己決定、結果としての自己責任が原則
であります。
 なお、そのときを迎えるまでの間、行政・議会とも市政存続に向けての懸命の努
力がなさねばならないことはいうまでもありません。市民の皆さんにはこの進捗状
況と、合併協議会における知育の将来構想並びに市民福祉の確保状況、加えて
現在の段階においては未だ不透明な国の動向、全国市町村の合併状況等を勘
案材料として判断していただくことが可能になります。また、そのための情報提供
はリアルタイムでなされねばなりません。

 結論を申し上げます。黒見市長からの合併協議会設置要求について、本議会
としては、「合併の是非についてはしかるべきときに住民投票でこれを決する」と
いう付帯条件をつけて認めるべきであります。議員各位のご賛同を賜り、住民投
票条例の提出については議会提案としたいと考えます。
 以上でございます。市長のご所見をお聞かせください。

                
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