バリアンツ
第1章 第１話 〜序章の終幕〜
「・・・しかしそれでは、街道工事の予算が減るばかりです。」
「とは言え・・・食糧難を放って置くわけにはいかん。」
「そ、それはそうですが・・・・・」
のどかな、至ってのどかな光の月の午後だった。
しかし、いくら世間がのどかとは言えど、目の前でこのような討論を繰り返されてはいい気分も失せる。
その上、片方は父親。
片方は神経質な禿の年寄りだ。
これでは考えがまとまらずにいるのも頷けるだろう。
その他の者達も、二人の言い争う姿に押されて全く黙り込んでいる。
まぁ、いくら禿げた老いぼれとは言えど一応はこの辺りの権力者だ。
若い者が口を挟んだところで、「何じゃ、その言い草は！！わしが若かった頃は・・・」などと長々しく説教されるのが落ちであろう。
そう言えば、つい三日前にそうやって勇気有る若者が撃沈されたのを思い出した。
「・・・様、ソフィア様！？」
不意に名前を呼ばれ、ソフィアはびくっと顔を上げた。
今まで不毛に言い争う二人を見ていた人々は、皆此方に視線を向けている。
「は、はい・・・・・何でしょう・・・？」
居眠りしていたと思われては一大事だ。
出来るだけぼんやりしていた事を悟られないように、声のした方を見て答える。
「ソフィア様は、どうお考えですか？矢張りお父上に賛成で？」
一同の視線に耐え切れず、ソフィアは少しだけ顔を伏せた。
余り注目して欲しくないのが人の常だが、彼女の立場上は致し方ない。
それを父親も理解しているようで、彼女に助け舟を出そうとする様子はなかった。
「わたくし、は・・・確かにお父様に賛成ですね。」
突き刺さるような視線を浴びながら、それでも必死に尻込みしないよう努めた。
「今、民の不安は募るばかりです。デザートローズもタクスハザードも随分荒れていると聞きます。特に・・タクスハザードについては音信不通状態だとか・・・。
こんな時に街道工事をしても、恐らく利用者は通常の半分以下・・・もしかしたらそれ以上に減るかも知れません。それならば、効率的に民の食料を増やした方が得策かとは思います。」
ソフィアの言葉に、その場の全員が頷きあった。
父もまた、満足そうにソフィアに微笑みかけている。
だが彼女にしてみれば、「そんな無駄なことをする必要はない」と言うのをかなりへりくだって、屁理屈を捏ね回して捻り出した言葉なだけに大した達成感は感じられなかった。
それでも周りはそんな事考えてもいない。
まだ１６の少女の堂々たる態度。
そしていかなる時も崩さない冷静な表情。
おおよそ、同い年の村娘などとは全く違うその様子は、会話の的になるのも当然だろう。
「うむ、ソフィアが上手くまとめてくれたところで・・・今日の議会はこれでお開きにするとするかな。今日は天気がいい。皆、のんびりと過ごすとよかろう。」
父は娘の堂々たる態度に存分満足したらしい。
上機嫌でいつもより１〜２刻早い解散を提案した。
他の者も疲れていたのだろう、
その意見は呆気なく通されることとなった。
次々と人が去っていく中、ソフィアはただボンヤリと遠ざかる人を見つめていた。
こうして議会は、いつも気分次第で終わってしまう。
平和を望む議会だと言うのに、どうしてこうも気まぐれだろう。
何処かで、「人の心はジプシーの子」と歌った歌劇の主人公がいたのを思い出す。
そんな風に美化できるようなものではないが、気まぐれは誰にも止められないのが常であろう。
上機嫌の父を怒らせる気もない。
全く、父の親ばかにも困ったものだ。
「ソフィア。」
ぽん、と肩に手を置かれ、ソフィアは我に返った。
「堂々としていてとても威厳があった。それでこそ我が娘に相応しいぞ。よくやったな。」
にこやかな父の顔につられ、ソフィアも柔らかく微笑んだ。
「有難きお言葉でございます、国王陛下。」
父は少し困ったように首振った。
「こんな席でまで畏まらずともよい。今は父と呼びなさい。」
それを聞いてソフィアはほっと息を吐き出す。
そしてまた、先程よりも数倍柔らかく笑んだ。
「はい、お父様。」
国王は満足したように一度、二度頷いた。
あぁ、この雰囲気がいい。と、ソフィアは思う。
馬鹿に深刻なだけの議会で、ただアイコンタクトを交わすよりずっと解りやすいし、気持ちも楽でいい。
どうせなら議会で妙な意地を張るよりも、この方がよほど民の信望を得られるであろうな。
・・・そんなことを考えていた時。
２人の和やかな空気を激しく乱す雑音が聞こえてきた。
喉の奥から搾り出されるような低い、
それでいて血に飢えた獣の呻きのような・・・。
ビクッ、としてソフィアは身を縮める。
・・・が、すぐにその緊張は解かれることとなった。
「レビス、お前か！！」
国王は酷く憤慨した様子だ。
声の主はすぐ傍の椅子に持たれて眠っていた青年。
レビスと呼ばれた彼は一度大きく船漕ぎ、はたと目を覚ました。
「・・あぁ、よぉ親父ぃ。議会終わったのかぁ？」
まだ覚醒しきっていないのか、その目はとろんとしている。
全くやる気のない極みのような、そんな表情だ。
ソフィアははらはらとレビスの目を見つめた。
そんな事を言っては、折角機嫌が治ってきた父を怒らせかねない。
否、もう既に怒らせているが。
「馬鹿モン！！お前は何でいつもそう不真面目なんだ！？妹のソフィアはあんなに真剣に議会に臨んでいたと言うのに！！」
いくら国王が憤怒しても、レビスは大欠伸をしながら伸び上がり、全く効果がない。
「ふわぁぁぁ・・・あぁ、悪かった悪かった、すんませんねぇ〜。」
やる気のいかにもなさそうな返答に、国王は益々憤慨した。
顔は真っ赤になり、反対に額には青筋が走ってピクピクと痙攣している。
「・・・お、お父様！！」
父の怒号が響くより一歩早く、ソフィアは声を張り上げた。
娘の止めが入り、国王も少しばかり冷静を取り戻す。
「今日はもうお疲れ、でしょう？そろそろお茶にしてはいかがでしょうか・・・？」
恐る恐る声を掛けると父も少し顔を綻ばせた。
「うむ、そうだな・・・ではすぐに準備させようか。」
ソフィアもようやくほっとして胸を撫で下ろす。
上機嫌を取り戻して去っていく父を見送り、レビスは思いっきり吹き出したのはその直後だった。
それを見て、今度はソフィアが憤慨する番である。
「お兄様！もぅ・・あんまりお父様を怒らせないで下さい！」
こう言う時神経をすり減らすのは、何時だって自分なのだ。
度が過ぎた楽観主義の兄と、度が過ぎた癇癪持ちの父を持つとどうにも苦労が絶えない。」
「あっはは、すまねぇな。でもそんな気を使いすぎる必要はないんじゃねぇの〜？」
これだもの・・・と、ソフィアは肩を大袈裟に竦める。
悪気がちっともないのだから、これ以上は何を言っても無駄だろう・・・。
「お兄様、くれぐれもお茶の席ではお父様の機嫌を損ねないで下さいね！お茶の時間まで気を揉むのは御免ですよ！」
そう言って、キッとレビスを睨む。
翠の綺麗な瞳が厳しく兄を映していた。
「おぉ、怖い怖い・・・。そんな顔してたら、寄ってくる男なんざよっぽどの物好きしかいねぇぞ〜？」
「お兄様！！」
またからかわれた・・と、ソフィアは叫んだ後に気付き後悔した。
まったく、馬鹿正直に相手しても疲れるだけだ。
デメリットばかりでメリットは１つもない。
「ま、そうカリカリしなさんな〜。お兄様はお茶には出んからさ。」
パチッ、とソフィアは目を瞬かせた。
「出ないのですか！？」
「あぁ、そ〜ゆ〜カタッ苦しい席は嫌いなんだよ。それより乗馬の方が何倍も面白ぇさ。」
カカカ、と笑いながらレビスは唖然とするソフィアの横をすり抜けている。
「お、お兄様ぁ！！」
慌てて追うが、長く重いスカートはそれを邪魔する。
必死で裾を持ち上げて走るソフィアの頭を、レビスはぽんぽんと撫でつけた。
「出来の悪ぃ次男より、出来のいい長女の方が相手してて親父も楽しいだろぉ？ま、変わりに相手してやってよ。」
それだけ言うと、またソフィアを放ったまま足早に立ち去ってしまう。
後に残ったソフィアは、何故か納得しきれない表情で立ち尽くしていた。
部屋に戻るなりソフィアは、吐いていたスリッパを乱暴に脱いで窓に投げつけた。
皮製のそれはベチッ、と大きな音をさせて硝子に跳ね返る。
その音に気付き、部屋の隅に寝ていたものが頭を擡げて起き上がる。
「くるるる、きゅー・・・」
ソフィアと同じ、翡翠を思わせる綺麗な目がくりくりと動く。
「あぁ、ごめんねルー。起こしちゃった・・・？」
ルーと呼ばれたそれは背中についたちっぽけな青い羽を羽ばたかせてソフィアの頭上までやってきた。
白い鱗がきらりと部屋の灯しに反射して光る。
細い全長３０ｃｍばかりのそれは、竜だった。
白竜と呼ばれる、竜族の中でも格段珍しいとされる種の子供である。
「そふぃあ、怒ってる。くるるる、きゅー・・・」
この、「くるるる、きゅー」と言うのはルー独特の鳴き方だ。
何故かは解らないが、この声を聞くと聞いたものはとても気持ちが和む。
今のソフィアには、それが有難かった。
少し気が立っていたのだが、その声で落ち着いてしまったからだ。
「もう怒ってないわよ。ごめんね、嫌な思いさせちゃってさ。」
眉尻を下げて笑み掛けると、ルーはぱぁっとその翠の目を輝かせた。
「そふぃあ、そふぃあ、くるるる、きゅー！」
嬉しそうに声を上げて何度も「くるるる、きゅー」を連発する。
ルーとソフィアとは卵から孵った時からの付き合いだ。
お互いに相手はまるで兄弟のような関係。
しかも、道楽なあのレビスとは真逆な感情である。
「ねぇ、ルー・・・私もう、やだよ。こんな生活・・・。」
ソフィアはルーの体を抱きしめ、ふかふかの寝台に座り込んだ。
ルーはまた悲しそうに「くるるる、きゅー」と呟く。
「みんな私がちょーっと物を言ったからって注目して・・・お父様もお父様よ。まるで私が成功作みたいな顔しちゃってさ・・・。」
その癖兄のレビスは異端扱い同等の接し方だ。
ソフィアにとってはどんな兄でも兄であり、またどんな父でも父である。
父が兄を悪く言うのは聞くに堪えなかったし、
また兄が父をからかうのも目を伏せたい気で見ていた。
「お兄様も・・・私はディスプレイの為のマネキンじゃないのよ。なのに人のことからかって遊ぶんだから・・・。」
子供扱い、とも人は言う。
だけどソフィアは１６、と言う自分の年齢に少々大人びたものを感じていた。
１６ならばもはや王族では嫁ぎ遅れもいいところ。
このルーベンバッハ王国第一皇女としては、そろそろ結婚を考えた方が良いと父からも口をすっぱくして言われていた。
「だけど私は、何時までもお父様の言い成りになってるなんて真っ平だわ・・・ディアお兄様がいてくれれば・・・・・・・・・」
はっ、とソフィアはその名を口にした途端息を呑んだ。
駄目だ、駄目だ。
そんな事ばかり考えてちゃ。
ルーもそれを察してか、また「くるるる、きゅー」と鳴き始めた。
「そふぃあ、イケナイ。くるるる、きゅー！」
「イケナイ」は最近ようやく覚えた言葉だ。
まだたどたどしい口調だが、それが何故か年配のメイド頭を思い出させてソフィアは思わず吹き出した。
「・・っふふ、そうよね。あんまりディアお兄様に依存してはイケナイわ。お母様に怒られちゃう。」
ルーの口真似をして言うと、「くるるる〜」と、笑うような鳴き声が返ってきた。
「・・・ねぇ、ルー・・聞いてくれる・・・？」
突然声のトーンを落としたソフィアに、ルーは僅かな戸惑いを見せる。
ソフィアはその言葉を口にした瞬間、心臓が数ｃｍ縮んだような気がしていた。
ルーになら、と思ったのに、矢張り言うのは躊躇われる。
「そふぃあ、なになに？」
急かすようにルーが言う。
ソフィアは暫く黙っていたが、遂に重い口を開くことにした。
「私、ね・・・タクスハザード王国なら嫁いでもいいと思うの・・・だって・・・・・・」
そこまで言って、ソフィアはきゅっと口を結ぶ。
「・・だって・・・・・」
もう一度、呟く。
そして思い出す。
脳裏の更に奥で。
もう会った半年以上前になるだろう、彼の人を。
暖かい赤毛に褐色の目をした、彼の人を。
「・・そふぃあ、くーれっとが好き？くるるる、きゅー。」
「なっ！！」
突然ルーが突拍子もなく言い出してソフィアをこれ以上なく驚かせる。
「ち、違う！！違うよぉ！！」
と、思わずムキになって反論したが、真っ赤になった顔では全く以って説得力に欠ける。
ルーの言う「くーれっと」とは、タクスハザード王国の第一皇子クーレット・タクスハザードの事だ。
タクスハザード王国はここルーベンバッハ王国とは和睦協定を結ぶ中で、しかもソフィアの母、アメリアとタクスハザード国王のリジェイトは実の兄妹であった。
それ故に、両国は昔から随分親しい付き合いをしており、また皇子や皇女に至っては兄弟・・もしくは友人以上の付き合いをしてきた。
・・・・・否、させられてきた、と言うべきか。
「くるるる、きゅー！そふぃあ、くーれっとが好き！くるるる〜！」
ルーは何度も「くるるる、きゅー」を連発し、何時の間にかソフィアの手をすり抜けて飛び回っている。
まるでからかうように、くるくるとその頭上を旋回しながら。
「もぅ！ルー！！そんなんじゃないってば！！そりゃあ・・・クーレット様とは・・婚約してるけど・・・・・で、でもそれだって！お父様が勝手に決めたことよ！！」
しかしルーは聞く耳持たない。
まだ「くるるる、きゅー！」と言いながら飛び回っている。
「はぁ・・まったくもぅ・・・・・」
諦めてソフィアは寝台に体を預けて倒れこんだ。
いくら一国の皇女様とは言えど、その実態は花も恥らう16歳。
まだまだレンアイなんかには初心者な頃である。
「そふぃあ、怒った？」
急に静かになったソフィアを心配し、ルーが恐る恐る降りてくる。
泣きそうな目があまりにも可哀相で、思わずつられて悲しい笑みを作ってしまった。
「そうじゃないよ、ただ・・ちょっと思ったの。」
ソフィアはルーの頭をそっと撫でてやる。
「私って・・一体どれくらいこの国の事知ってるのかなぁ〜・・って。自国のことも解らないようなオヒメサマが、他国のオウジサマと勝手に幸せに・・な〜んて・・・・・自分勝手過ぎるじゃない？」
ルーは困ったように首を傾げる。
言葉が理解できないのか、それとも内容が、だろうか。
どちらにせよまだ難しい話題だったかな・・・と、ソフィアは微かに苦笑した。
「うそうそ、なんでもないよ。やっぱ疲れてるのかも、朝からず〜〜〜〜〜〜っと、会議だったし・・・。」
それを聞くとルーはぴくっ、としてソフィアを見つめる。
「遊ぶ？遊ぶ？？」
くりくりとその目に期待をいっぱい溢れさせて。
ルーがこんな顔をする時は相場が決まっている。
おねだり、だ。
ようは遊んで欲しいのだろう。
朝からほっぽりっぱなしだったな・・と、ソフィアはちょっとばかり後悔した。
「そうだね・・裏庭まで行こうか！」
むくっ、と体を起こして言ってやると、ルーは大層喜んでまた何度も「くるるる、きゅー！」を繰り返した。
そう言えば・・お父様とはお茶の約束があったわ…などとちらりと思い出したが、ここはルーのおねだりを優先させようと思う。
「あ！ルー、駄目よぉ！！」
本当に嬉しいらしく、ルーはあっという間に窓から外へ飛び出していた。
しかしここは三階。
ソフィアが外に出るには少々難しい高さだ。
急いでソフィアは寝台の下を探り、長いロープのようなものを持ち出す。
彼女が脱出用に常に寝台の下へ隠していたシーツ製ロープだ。
これを下に垂らせば、三階だろうが難なく降りられる代物。
・・・だが、よくよく考え直してみれば自分の今着ている服はそれに相応しくない。
何しろ人前に姿を現すために作られた特注ドレスだ。
間違って汚したし破いたりしては、仕立て屋と父の両方から大目玉を食らい兼ねない。
ソフィアははやる気持ちを押さえてクローゼットから古びた服を必死に引きずり出した。
「・・・・・そふぃあーっ！！」
不意に、ルーが甲高い声で叫ぶ。
「そふぃあ！早くきて〜！そふぃあ〜！！」
待ちきれなくなったのか、いつもの「くるるる、きゅー」も忘れてソフィアを呼んでいる。
だが彼女の着ている服は、どうしても一人で脱ぎ着するのは酷だ。
「そふぃあ！そふぃあ！！」
「ルー！ちょっと待って！！私はあなたとは違って飛べないのよ！？」
バルコニーを見て、あちこちへ飛び回っているルーを呼び止める。
ルーはソフィアの声に一瞬反応して此方を向いた。
しかしそれも本当に一瞬のことで、すぐに別の方を向いてしまう。
落ち着きなく、せわしなく飛び回るその姿が少しおかしい…と気づいたのはその時だった。
「・・・ルー・・？どうか、したの・・・・・？」
バルコニーに出てみると、ルーが一直線に飛んできた。
「そふぃあ！大変、大変！！」
ルーの様子も尋常ではない。
何か、心の底から驚愕するものを見つけたような。
これ以上ない驚きで瞳いっぱいにしている。
「な、何が大変なの？」
問い返してみても、ルーは「大変！」しか言わない。
仕方なくソフィアはバルコニーの手摺に持たれて、体を出来る限り外に出し、ルーが見ていた方向をじっと凝視した。
「・・・・・・・・・・・・あれ・・・・？」
ソフィアの瞳が、あるものを映す。
それは「通常」には有り得ない光景。
直後、ソフィアは体中の血液が一斉に凝固したような感覚に襲われた。
それでも心音だけは激しく鳴り響く。
しかし、そんな自分の体の仲に起こっている不可抗力の矛盾に構っている暇などはない。
「・・・ルー・・すぐに人を呼んで・・・・・」
嫌に冷静な口調でソフィアは言う。
ルーはそれを受けてすぐさま庭師の方へ飛んでいった。
「・・・嘘でしょ・・・？なんであんなところに・・・・・」
ぽつり、とうわ言のように呟く。
目は一点を見据えたままだ。
ソフィアはその場をすぐには動けず、微動すら出来ない状態で立ち尽くしていた。
「なんであんなところに・・・・・
子供が倒れてるのよ――――・・・！？」
のどかな風が吹き抜ける、光の月の午後であった・・・・・・。
To be continued