今、聖戦が起ころうとしていた。
辺りは闇に包まれた虚無の世界。
しかしそれでも、彼の手の中にある『聖戦』だけは、神々しく光り輝いていた。
そう、これで終わる。
全ての悲しみが。
全ての苦しみが。
この聖戦で全て終わる・・・・・。
「・・・よし、行こうぜ。相棒!」
青年は『聖戦』を握り締めた。
鼓動が伝わる。
『聖戦』の鼓動が。
「大丈夫・・きっと、勝てる・・・・・。」
自分に言い聞かせるように、青年は虚無の空間へ進んで行った。
青年は、まだ20にも満たないほど若かった。
茶に近い金色をした短い髪は、闇の中で尚生えて見える。
『聖戦』に照らされた顔には、鼻の頭に真一文字の大きな傷が縦断していた。
青年には想いがあった。
その想いは彼の決心を鈍らせた。
心臓は冷たいほど重い。
そして痛いほど打ち、打たれ、心音は直接鼓膜を震わせる
「怖い」
そんな感情が青年の中に生まれては消え、消えては生まれていった。
だが、それではいけない。
それでは、勝てない。
青年は自分を奮い立たせる。
重い足を一歩、また一歩と進ませる。
同じく生まれては消える、思い出の残像。
それは『聖戦』越しに自分の中に伝わってきた。
幼き日の自分。
まだ未熟だった、
目の前の『悲劇』をただ呆然と見ているしかなかった自分。
そして大きな壁。
大きな悲しみ。
それを全て越えた自分が、
それを越え、誰よりも強くなった自分が、今ここにいるのだ。
「・・・さぁ、踏ん張ってくれよ。後はお前とオレの腕頼みなんだから、な。」
青年はそう言って、『聖戦』を目の前まで持ってくる。
光り輝く『聖戦』。
それは、美しい刀身の剣だった。
「頼むぜ、相棒・・・・・聖剣『Holy war』!!」