第1章 「折れちゃったよ」

ガキィィィィィィン!! 剣と剣のぶつかり合う音が聞こえる。
このだだっ広い草原の中、二人の見習い剣士は模擬戦闘の真っ 最中…と言っても、そろそろ勝敗が決まりそうだった。
「くらえ!!」
小柄な男はそう言うと、剣を力一杯振り落ろした。
その風圧に より男の剣から真空の刃、カマイタチが発生し、相手めがけて 飛んでいった。
「ふん!!」
長身な男はそう言うと、カマイタチを見事によけて小柄な男の 懐の中に入る。
「これで最後だ!!」
「させるかぁ!!」
二人は渾身の一撃を相手にはなった。
ガキィィィィィン!!
とてつもなく大きな音がした。渾身の一撃は相手に当たらず、 剣と剣がぶつかり合っただけであった。
しかし…。
パキィィィン!
突然何かが砕けるような音がした。
見てみると、小柄な男の剣 が中心から二つに折れていた。それはもう、ポッキリと…。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
悲鳴に近いような声が草原全体に響いた。 「お…折れた…大事な剣が……俺のベイグナートが…!!」
小柄な剣士「リオ」がそう言った。
精神的ダメージが多かった のか、リオはわなわなと震えていた…。
「べつにいいじゃないか。どうせそこらで安く買った剣かなん かだろ?」
折った張本人でもある長身の剣士「ノヴィス」は、自分の剣を 鞘にしまいつつ、簡単に言う。
「よくない!!この剣は五年も使っていた、俺の思い出の品な んだぞ!!」
「うわっ、古!!」 「古って言うな!!」
いきなり大声で言われたもんだから、ノヴィスはビックリした 。
「おいノヴィス!!お前、この剣どうしてくれるんだよ!!」
「だって折れちゃったんだもん。新しいの買えばぁ?」
「なんだよその言い方は!人の剣折ったくせに!」
リオは涙チョチョ切れ状態になりつつ、さらにこうわめく。
「うわぁぁぁん……ノヴィスが俺の剣折ったぁぁぁぁ!!」 「いちいち泣くなよ……」
まるで子供の喧嘩である。
「こうなったら怒ったぞ…弁償だ!弁償!!」 「やだよ。俺そんなに金持ってないもん。」
「い〜やだめだ!!絶対弁償だ!!」 「やだ!!絶対にいやだぞ俺は!!」
「ねぇ〜俺達幼馴染みじゃないかぁ。いいだろ。別に減るもん じゃないんだし」 「減るよ!!」
「じゃあせめて一緒に直そうよ。お前は鍛冶屋に渡す金だけで いいからさぁ。」
リオはウルウルとした眼差しでノヴィスを見た。
ノヴィスはリオのウルウル眼差し攻撃を受けて、自分の良心に 100ポイント弱のダメージを受けた。
これにはさすがのノヴ ィスもタジタジである。
「仕方がないなぁ。鍛冶屋に渡す金だけだぞ。材料はお前が探 すんだからな。」
「よっしゃぁ!!」
思わずリオはガッツポーズをした。
こうして二人の見習い剣士は剣を直すために草原を旅立ち、町 へ向かっていった。
これが苦難の旅の始まりとも知らずに…………

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