第1章「魂との出会い」

「では、メルさんこの問題をやってくれる?」
教師のその言葉に、生徒達はいっせいに顔をその少女に向けた
メルと呼ばれた金髪の少女は下を向いていたが、すぐに顔を上げた
「はい」
そして、堂々と答える。
メルは黒板の前に歩き、チョークを持って、答えをスラスラとかいた。
教師はメルの答えを見、にこっと微笑む。
「ありがとうメルさん。また正解ね」 「ありがとうございます」
教師に礼を言い、メルは自分の席に戻った。
メルが席に戻ると鐘の音が聞こえた。
どうやら終礼のチャイムのらしい。
「はい。じゃあ今日はここまでね。昼食にします」
教師は軽く礼をして、教室を立ち去った。
「メルぅ〜、あんな問題よく解けたね〜」 昼食中、メルに話し掛けたのは同級生でクラスメートのプラムだ。
「やっぱり、10歳の頃から名が売れてますな〜。メル・スターティットさん☆」
メルをからかう様に言ったのはプラムと同じくクラスメートのリムだ。
「やめてよ。リム。」 「やっぱりぃ〜優等生ねぇ〜」
プラムはリムと同じようにからかう様に言う。
「プラムまで!」
…とまぁこんな感じでほのぼのとした昼食タイムは終わった。
メルの学校には学園寮がある。
授業がない生徒はここで生活している。
勿論、メルもここで生活している。
午後の授業は終了したのでメルは真っ先に寮へと向かい、自分の部屋に入る。
昼食後の午後の授業はキツかったせいか、メルはベッドに倒れ込む。
「おやすみなさい…」 独り言をいいメルは深い眠りに落ちた…

「い…おい…」
寝て2時間後位メルは何処からともなく聞こえる声で薄く目を開ける。
「んあ?」
そして、寝ぼけた様な声を出す。
「おい!起きろ!この…馬鹿娘がっ!!」
メルにはその言葉がはっきりと聞こえた。 「馬鹿娘とは失礼ね!!」
薄く開いていた目を完全に開け、がばっと起きあがる。
メルは辺りを見回すがその声の主の姿は見えない。
…空耳、だったのだろうか?
「やっと起きたな」 でも声は聞こえる。 「ど、何処…?」
メルは辺りをきょろきょろしている。
「上だ…」 「ふえ?」 メルは上を見上げる。すると、上には透明で丸くてふわふわしたものが宙に浮いていた。
「よう!」
丸いものが軽く挨拶をする。 そう、声の主はこの宙に浮かんでいるこの丸いやつだったのだ。
…これは魂というべきか …
メルはそれを見て青ざめる。
「……嘘……」 思わず声が出た。
「本当だ!俺は魔術師に体を奪われたんだ!!お前は魔法使いなんだろ?俺を元に戻す方 法を知ってるんだろ?」
魂は強い口調で言う。
「私…」
メルは俯いた(うつむいた)。
「なんだ?もしかして元に戻す方法を知らないのか?魔法使いの癖に…」 「私……」
メルはまだ顔を青ざめたままだ。
「だからなんだよ!?何とか言えって…」
「私、死んじゃったのねーーーーーーー!!私が寝てる間に誰かが毒薬を飲ませて、私は 死んじゃったのね!!」
メルは驚きの声をあげる。声は部屋中に響いた。
「はぁ…?」
魂は唖然とした。
「結構私にライバルが沢山いるってリムから聞いたわ!誰かが私の才能を妬んで、毒薬を 飲まされて私は天国に…」
メルは片手をあげながら上を見た。
「おいおい、落ち着け。お前は死んでねぇよ。ほら、ちゃんと足だってあるし… しかもよく見てみろ、自分が寝ていたベッドだろ?」
魂は冷静な口調で答えた。
「あ、本当だ」
メルは下を見、そして自分の足を見る。
「…で、魂さん。私に何かご用?」
メルは何もなかったかの様に聞く。
「がくっ…お前、最初から話きいてなかっただろ?ま、いいか。じゃあ、もう一度言う ぞ。
俺はな、変な魔術師に体を奪われたんだ。俺は元の体に戻りたいんだ!お前何か方法 を知らないか?」
メルは考え込む。
「あ、そういえば!!」
暫く(しばらく)考え込んだ後、メルは手を叩く。 「何か方法を思いついたのか?!」
魂は嬉しそうな口調でいう。
「今日のヤキソバパンとコロッケパン美味しかったなって。また食べたいな〜」 「真面目に考えろ!!」
メルのほのぼのとした返答に魂は怒鳴った。
メルは耳を塞ぐ。
「んもう〜冗談だってば〜〜〜〜。確か、私が以前読んだ本でホムンクルスのことが書い てあったわ」
「ホムンクルス?聞いたことがないな」
「ま、魔法使いしか知らないからね。…ホムンクルスってのは錬金術で体の器を作って その器に魂をいれるのよ」
「ふ〜ん。そうか、今やれるか?」 「ううん。ホムンクルスをやるには学長の許可が必要なのよ」
「んじゃ、その学長とやらに会いにいこうぜ!」 「そうね」
メル(と魂)は部屋をあとにした。
長い廊下をメルは歩き続けた。 その途中にメルは魂に話掛ける。
「そういえば、貴方の名前はなんていうの?」
「あぁ、俺の名前はクルス・ラグレストだ」
その名前を聞いた途端メルは足を止め、唖然としてその場を立ち尽くした。
                            
 第2章に続く

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