クリニックロゴ
バイタルサインと神経および作動物質

 バイタルサインは生体内の各種要因によって刻々と変動します。
 バイタルサインに影響を及ぼす色々な因子について記載してみます。

     交感神経  : 神経終末からカテコラミン(Adr,Nor)(Epi、NEpi)を分泌。→バイタルサインに影響。
     副交感神経: 神経終末からアセチルコリン(Ach)を分泌。→バイタルサインに影響。

   参照、「口腔領域に関与する神経」 

バイタルサインと神経系 
【Gr】神経系 
  神経系の概要
 





  


【1】自律神経系 
  Gr:自立神経系

 末梢神経系のうち植物性機能を担う神経系であり、動物性機能を担う体性神経系に対比される。
 自律神経系は内臓諸臓器の機能を調節する遠心性機序と、内臓からの情報を中枢神経系に伝える
 求心性の機序
という2つの系からなる。  参照、「口腔領域に関与する神経」

1:交感神経 (神経終末からAdrを分泌) 

 「闘争と逃走の神経(Nerves-Fight and Flight)」などとも呼ばれるように、激しい活動を行っている
  時に活性化する。
     例:「ある日、森の中、熊さんに出会った、場合」
         脈拍↑、血圧↑、呼吸数↑、口渇、立毛、血糖値上昇、瞳孔は散大

 (1)解剖
   末梢の交感神経線維は胸髄・腰髄の側角細胞に始まり、末梢の効果器(内臓や皮膚)に分布している。

    @胸髄上部から出た交感神経線維
       上に向かい頚部交感神経節(上・中・下頚神経節)でニューロンをかえ、頭頚部や上肢、
       心臓、肺などに分布する。
  
    A胸髄中・下部の交感神経線維
       大内臓神経、小内臓神経などとして、交感神経幹を通過し、腹部の腹腔神経節などでニューロンを
       かえて腹部の臓器に分布する。

    B腰髄上部からの交感神経線維
       腰内臓神経を伝って下腸間膜神経節に入りニューロンをかえ、腹部から骨盤部の臓器に
       分布している。 


 (2)生理
   伝達物質−−− アドレナリン(Adr)、ノルアドレナリン(Nor)
   受容体−−−− α受容体(α1、α2)、β受容体(β1、β2、β3)


 (3)交感神経が末梢臓器に対する効果
    @頭頸部
       眼(Th1〜Th2): 瞳孔→散大
       毛様体筋→収縮

    A循環器
       心臓(Th1〜Th5)→血圧↑、心拍数↑、心収縮力↑、房室結節伝導時間延長短縮、電気的興奮性↑
       血管→収縮
       冠状動脈→拡張
       骨格筋動脈→収縮
       血管(骨格筋内)→拡張(循環アドレナリンの作用)
       一部の血管→収縮
    
    B呼吸器
       気道・肺(Th2〜Th7) 気管支平滑筋→弛緩

    C消化器系
       唾液腺(Th1〜Th2)→粘液性の液を分泌
       肝臓(Th5〜Th10)→グリコーゲン分解=血糖値上昇
       胆嚢・胆管→弛緩
       膵臓(Th6〜Th10)→膵液分泌↓、インスリン分泌↓
       脾臓(Th5〜Th12)→血管収縮(α受容体)、血管弛緩(β受容体)
       胃(Th6〜L1)→平滑筋弛緩、括約筋収縮、胃活動↑、胃蠕動運動↓、胃液分泌↓
       腸管Th6〜L1)→平滑筋弛緩、括約筋収縮
       小腸→運動↓、平滑筋弛緩、括約筋収縮、腸液分泌↓
       直腸(Th11〜L4)→平滑筋弛緩、括約筋収縮

    D泌尿・生殖器系
       副腎髄質(Th10〜L2)→カテコールアミン分泌
       腎臓(Th11〜L1)→レニン分泌
       膀胱(Th12〜L4)→膀胱三角収縮、括約筋収縮、排尿筋弛緩
       生殖器(Th10〜L4)→射精

    E皮膚
       皮膚 汗腺→発汗    立毛筋→収縮

2:副交感神経 (神経終末からAchを分泌)

 食事時、睡眠時の様に安静な状態の場合に活性化する。
   例:ゆっくりと食事をしているとき
        脈拍安定、血圧安定、呼吸安定、唾液↑、腸管運動↑


 (1)解剖
   副交感神経は遠心性の自律神経であり、臓器近傍あるいは臓器内に存在する神経節を隔てて
   大きく節前線維と節後線維に分けられる。
   自律神経系のうち脳幹部に由来する線維(V動眼神経、Z顔面神経、\舌咽神経、]迷走神経)は
   全て副交感神経
である。
   なお、Z顔面神経、\舌咽神経、]迷走神3つについては求心性線維も含む。
   ちなみに、これらの副交感神経と拮抗する交感神経は上頚神経節でニューロンを乗り換え、
   内頚動脈にそって(内頚動脈神経叢)各器官に分布する。


 (2)生理
   節前線維・節後線維ともに末端部から神経伝達物質としてアセチルコリンを放出することから
   コリン作用性神経
と呼ばれる。
     神経伝達物質
       アセチルコリン(ACh)
     受容体
       ムスカリン受容体(M1、M2、M3)
     AChのAgonist
       ニコチン(少量の場合)、ムスカリン
     アセチルコリン受容体を阻害する作用
       アトロピンやスコポラミン (すなわち副交感神経の抑制


 (3)臓器に対する効果
   @頭頸部
      眼(Th1〜Th2) 瞳孔→収縮
      毛様体筋→収縮
      涙腺(Th1〜Th3)→分泌
      鼻腔腺→分泌

   A循環器
      心臓(Th1〜Th5)→血圧↓、心拍数↓、心収縮力↓、電気的興奮性↓、
      血管(いくつかの外分泌腺の血管、いくつかの外性器の血管)→拡張(一過性)
      冠状動脈→収縮
      骨格筋動脈→拡張
      血管(骨格筋内)→収縮
      一部血管→拡張

   B呼吸器
      気道・肺(Th2〜hT7) 気管支→気管支平滑筋収縮
      気管支腺→分泌

   C消化器系
      唾液腺(Th1〜T2)→漿液性の液を分泌
      肝臓(Th5〜Th10)→グリコーゲン合成
      胆嚢・胆管→収縮
      胃腸管(hT6〜L1)
        胃→平滑筋収縮、括約筋弛緩、胃活動↓、蠕動運動↑、胃液分泌↑
        腸管→平滑筋収縮
      膵臓(Th6〜Th10)→膵液分泌↑、インスリン分泌↑
      腸 小腸→運動↑、括約筋弛緩、腸液分泌↑
      直腸(S2〜S4)→平滑筋収縮、括約筋弛緩

   D泌尿・生殖器系
      膀胱(S2〜S4)→膀胱三角弛緩、括約筋弛緩、排尿筋収縮 

3:自律神経反射

 反射とは、ある刺激に対してステレオタイプに生じる応答のことである。
 数多く生体に存在する反射において、自律神経系が関与しているものもあり、


 (1)内臓−内臓反射
   求心路と遠心路がともに自律神経線維によって構成される反射機構。
   多くの内臓機能はこの機序によって自律的に行われている。

   @動脈圧受容器反射
      頚部の動脈系には圧受容器と呼ばれる圧センサーが存在する。
      この圧受容器は常に動脈圧をモニターし、この情報は求心性自律神経を介して中枢神経に
      伝えられる。
      中枢神経はこの情報を基にして、交感神経及び迷走神経のフローを変化させることによって、
      血圧を調節している。

   A頚動脈洞反射 (ツェルマ−ク・ヘーリング反射)
      頚動脈洞を刺激することによって起こる舌咽神経−迷走神経反射である。
      喉仏の左右にある頚動脈洞を圧迫すると、圧受容体が圧上昇を感知し、舌咽神経が延髄孤束核に
      伝え、孤束核から迷走神経背側核に伝え、迷走神経が過剰な反射を起こし、心臓の洞房結節や
      房室結節に伝え抑制され徐脈となり、血圧が低下し、脳幹へ行く血液が少なくなり脳幹での
      酸素量減少で失神状態に陥ることもある。
      これを、頚動脈洞性失神という。
      脈拍が過剰になった時、それを抑えるために利用されることもあり、これは、頚動脈マッサージ
      といわれる。
      また、柔道や柔術のような格闘技などの絞め技にも利用され、頚動脈洞反射によって失神した
      状態を「落ちる」と呼ぶ

   B迷走・迷走神経反射 (Vago−vagal reflex)
      ストレス,強い疼痛,排泄,腹部内臓疾患などによる刺激が迷走神経求心枝を介して,脳幹血管運動
      中枢を刺激し,心拍数の低下や血管拡張による血圧低下などをきたす生理的反応。
      脳幹血管運動中枢からの刺激は末梢各臓器の運動枝を介して,伝えられる。
      運動枝は骨盤内臓器を除く全臓器に分岐し,気管喉頭や消化管機能に影響を与える。
      本反射は生命維持のための防衛反応であるが,過剰反応をきたして身体異常を生ずることがある。
      排尿時の迷走神経反射により血圧低下をきたしたり(排尿時失神)する。

   C三叉・迷走神経反射 
      疼痛や精神的衝撃などによるもので、三叉・迷走神経反射により全身の血管拡張、徐脈、
      血圧低下が起こる脈管性減圧性失神 (vasodepressor syncope) に含まれるものが多く、
      外傷直後の1次ショックもこれに属する。

    1)神経原性ショック neurogenic shock
       疼痛や精神的衝撃などによるもので、三叉・迷走神経反射により全身の血管拡張、徐脈、
       血圧低下が起こる。
       外傷直後の1次ショックや、いわゆるデンタルショックももこれに属する。
       治療は末梢血管の緊張回復を主とする。

    2)デンタルショック
       歯科治療に対する不安、興奮、恐怖は交感神経・副腎系を刺激し脈拍増加および著しい血圧の
       上昇をもたらす。 
       これらは圧受容体反射を亢進させ、迷走神経の緊張状態を作り、脈拍や血圧を正常に
       向けるように働くが、過剰になればショック状態となる。
       さらに口腔内の軽痛刺激は直接迷走神経反射を惹起するといわれており、両者の
       相互作用も考えられる。

        症状
          めまい感、悪心、嘔気、虚脱感 他覚症状:顔面蒼白、冷汗、嘔吐、浅呼吸、徐脈
          血圧下降、意識消失
        処置
          治療の中止、水平仰臥位、額面側方(吐物の誤喋防止)
          ベルト等、体を緊縛しているものを解除
          酸素投与(Maskで7〜10/分)、血圧計装着
          循環系一静脈確保、輸液、収縮期圧が70mHg以下または平常時の25%以上降下して
          低血圧が持続し回復が遅い時にはエフェドリン1/10A緩除に静注

    3)眼球-心臓反射(アシュネル反射)
       三叉神経ー迷走神経を介する(三叉神経→延髄→迷走神)反射。
       経眼球を圧迫すると徐脈が起こる。


 (2)体性−内臓反射
   求心路が体性感覚神経、遠心路が自律神経系からそれぞれ構成される反射機構である。
   皮膚に侵害性刺激(いわゆる痛み刺激)を加えると交感神経系の機能が亢進し、心拍数の増大、血圧の
   増加等が生じる反射である。
   他にも、温熱刺激を皮膚に加えると発汗が生じるが、これは温度刺激が体性感覚神経を介して、
   汗腺支配の交感神経を興奮させた結果生じる


 (3)内臓−体性反射
   心路が求心性自律神経、遠心路が体性運動神経からなる反射機構である。

   @筋性防御
      腹腔臓器、腹膜の障害(炎症、機械的な変化)が求心路を介して腹筋群を収縮させるという現象。
     臨床的に多くの消化器疾患で認められ、特に虫垂炎の理学的所見として有名である。


バイタルサインと各種生体内物質および薬剤 
カテコラミンのα作用、β作用
  α・β作用

 生体アミンであるカテコラミンは、受容体に直接作用する物質であり、臓器によって興奮や抑制など
 様々な作用を示し、結合する受容体によってα作用、β作用と呼ぶ反応を起こす。
 α、β受容体はその存在部位や機能などからα1、α2、β1、β2、β3に分類される。

    α1作用   血管収縮(BP↑)  瞳孔散大 腸管抑制
    α2作用   血小板凝集     脂肪分解抑制

    β1作用   心収縮力増大(HR↑、SV↑)

    β2作用   気管支拡張作用  糖代謝の活性化(glc↑)  
             平滑筋弛緩  末梢血管拡張作用(筋肉・肝臓)
             気管支平滑筋の拡張、血管平滑筋の拡張(筋肉と肝臓)、子宮平滑筋弛緩
   
    β3作用   基礎代謝に影響(寒冷ストレスに対する順応)
             子宮の平滑筋等、各種平滑筋を弛緩

α・β受容体

 @α1受容体 
    心筋や平滑筋などの細胞膜に分布
    心臓(HR↑、SV↑)、血管(収縮)、瞳孔(散大)、皮膚(立毛)
    前立腺(収縮)などに関与

 Aα2受容体
    血小板凝集、脂肪分解抑制のほか様々な神経系作用に関与。

 Bβ1受容体  
    主に心臓に存在する。
    心収縮力増大、子宮平滑筋弛緩、脂肪分解活性化に関与。

 Cβ2受容体  
    気管支や血管、また心臓のペースメーカ部位にも存在する。
    気管支平滑筋の拡張、血管平滑筋の拡張(筋肉と肝臓)、子宮の平滑筋等、各種平滑筋を弛緩させる。
    また、糖代謝の活性化に関与する。

 Dβ3受容体
    消化管、肝臓や骨格筋に存在する脂肪細胞(脂肪分解、燃焼)に関与する。

α・β作動薬と拮抗薬  

 (1)α、β共通の作動薬
      強心、昇圧、気管支拡張、散瞳、血糖上昇の各作動を発揮する。    
      臨床的には、心停止時に用いたり、アナフィラキシーショック・敗血症に対する血管収縮薬や、
      気管支喘息発作時の気管支拡張・痙攣抑制薬として用いられる。

    @アドレナリン(Adr) エピネフィリン(Epi)  (ボスミン  エピペンなど)
       (註: 1γ=1μg/kg/min=3mg/50Kg/60分)
       0.05γ〜
       α/ β1/ β2=++ /+++ /+++   (腎動脈作用−)
       強力なα、β1作用を持つ。β2作用もあり。
       頻脈必発のため心疾患では使いにくい
       心臓では→心収縮↑、心拍数↑
       血管に対しては→冠動脈拡張、末梢血管収縮(BP↑しかし末梢循環不全になってしまう)
       平滑筋に対しては→気管支拡張
       不整脈を誘発しやすい。

    Aノルアドレナリン(Nor) エピネフィリン(Epi) (ノルアド など)
       0.05γ〜
       α/ β1 /β2=+++ /++ /-     (腎動脈作用−)
       強力なα、β1作用を持つ。強力にBPを上昇させる
       DOAでも効果がない際に使用。
       後負荷が増大するため心不全や心疾患などでは使いにくい。


            



    Bド−パミン(DOA)  (イノバン  ドパラルミンなど)
       3γ〜
       α/ β1/ β2=+ /++ /-    (腎動脈拡張作用++)
       2〜5γ(低用量)ではドパミン受容体に作用
         →腎血管拡張→腎血流量アップ→利尿作用
       5〜10γ(中容量)ではβ1作用優位、β>α
         →心収縮↑、心泊数↑、末梢血管収縮
       10γ〜 (高用量)ではα作用優位。α>β
         →末梢血管収縮、心収縮↑、心泊数↑、利尿作用は消失
       副作用
         →頻拍性不整脈、虚血性肢壊死、悪心・嘔吐、消化管運動障害(麻痺性イレウス)

    Cドブタミン(DOB) (ドブトレックスなど)
       3γ〜
       α/ β1/ β2/=+ /+++ /++     (腎動脈拡張作用−)
       β1刺激による心拍出量(CO)の増加が主な作用。ドパミンよりも心拍数の上昇が少ない。
       β1作用により心収縮能が上昇するが、β2作用では末梢血管を拡張
          →血圧を上げずに心収縮能を上昇させることができる。肺うっ血にも著効。
       心筋の酸素消費量、そして心拍数の増加はDoAより少ないと考え、心筋保護の面では有利である。
       収縮不全による急性心不全に有用。心原性shockによる単独療法には適さない 
       副作用は特になし

    Dエフェドリン
       鬱血除去薬(特に気管支拡張剤)、または局部麻酔時の低血圧に対処するために使われる
       交感神経興奮剤。
       アゴニストとしてα-およびβ-アドレナリン受容体の活動を増強する。


 (2)α作動薬 (α-Stimulant)
     主に高血圧・前立腺肥大による排尿障害などの治療に用いられている。
     オキシメタゾリン(ナシビン) メトキサミン、フェニレフリン、クロニジン


 (3)β作動薬 (β-Stimulant)
    @β1作動薬
       心臓に主に存在し、心筋のβ1受容体に作用して収縮力を増強する。ドブタミンなどがある。

    Aβ2作動薬
       β2受容体は気管支や血管、子宮や膀胱壁において、平滑筋弛緩作用を発揮する。
       このことから、β2作動薬は概して、気管支拡張薬として気管支喘息および他の慢性閉塞性肺疾患の
       症状緩和に使われる。
       また、特にリトドリンについては、子宮弛緩薬として、切迫流産の治療に用いられる。
         
       イソプロテレノール
         カテコールアミンに分類されるアドレナリン作動薬のひとつ。合成薬である。
         β受容体に作用して心筋刺激作用を引き起こすため心停止の際に静脈内注射薬として使用
         される。気管支拡張薬としても利用される。
         ドブタミン、テルブタリン、リトドリン


 (4)α、β共通の拮抗薬
     ラベタロール、カルベジロール


 (5)α遮断薬 (α-Blocker)

     プラゾシン、フェントラミン、ドキサゾシン、フェノキシベンザミン、ヨヒンビン


 (6)β遮断薬 (β-Blocker)
     降圧薬や労作性狭心症患者の狭心症状予防、不整脈(心房細動、洞性頻脈、期外収縮時の
     心拍数低下)、心不全患者の心機能改善や突然死亡、心筋梗塞の心保護(予後改善)などの
     循環器疾患に対して用いられる。 

      例:プロプラノロール(インデラルR) メトプロロール、ブトキサミン
          不整脈、高血圧、心筋梗塞、緑内障、片頭痛の治療に使用される。
          副作用として喘息を悪化させたり、頭痛、倦怠、めまい、徐脈などが発生すること。 

アセチルコリン(ACh)  
 
 アセチルコリンを伝達物質とする神経をコリン作動性神経という。

AChの生理・化学

 (1)合成・分解  
     AChは神経伝達物質であり、神経終末部で合成される。
     Coline acetyltransferase(CAT)によってアセチルCoAから合成され、
     Acetylcholineesterase(AChE)によってコリンと酢酸に分解される。

     脳内のAChの相対的減少はアルツハイマー病と関連があるとされる。
     コリンエステラーゼ阻害剤(アリセプトR)が治療薬として用いられている。
     一方、脳内のアセチルコリンの相対的増加はパーキンソン病と関連があるとされている。


 (2)中枢での生理作用
     前脳基底部から大脳皮質・海馬への投射に関わっている。つまり、学習に関与している。
  

 (3)抹消での生理作用
     血管拡張、心拍数低下 消化機能亢進 発汗 瞳孔縮小


         

コリン作動性神経

 アセチルコリンを神経伝達物質としている神経のことをコリン作動性神経といい、以下のものがある。

 (1)副交感神経(神経節)
     受容体の種類−−−ニコチン性受容体(興奮)(脱分極)
     アゴニスト=ニコチン アンタゴニスト=ツボクラリン


 (2)運動神経終末(神経筋接合部)
     受容体の種類−−−ニコチン性受容体(興奮)(脱分極)
     アゴニスト=ニコチン アンタゴニスト=ツボクラリン


 (3)心臓(洞房結節)
     受容体の種類−−−ムスカリン性受容体(抑制)(過分極)
     アゴニスト=ムスカリン アンタゴニスト=アトロピン


 (4)腸
     受容体の種類−−−ニコチン性受容体(興奮)(脱分極)
     アゴニスト=ムスカリン アンタゴニスト=ツボクラリン

アセチルコリン関連製剤

 (Gr)
   コリン作動薬 (副交感神経興奮薬)
     コリン作動性線維に作用し、副交感神経を刺激する薬物。

   コリンエステラーゼ阻害薬
     コリンエステラーゼの活性を阻害し神経末端のアセチルコリンの濃度を上昇させることで副交感神経
     を興奮させる薬剤。

   抗コリン薬 (副交感神経遮断薬)
     AChが受容体に結合するのを阻害する薬物。



 (1)コリン作動薬 (=副交感神経興奮薬)
   @サラジェン  (塩酸ピロカルピン) 
      口腔乾燥症状改善薬の保険適用となっている。

   Aサリグレン  (塩酸セビメリン)−−シェーグレン症候群の診断が必要
      直接型副交感神経興奮薬。ムスカリン受容体の作用薬。
      口腔乾燥症、シェーグレン症候群の改善薬。
      唾液腺のM3受容体を選択的に刺激して持続的に唾液分泌を促進させる。
      副作用:消化器症状や 発汗など


 (2)コリンエステラーゼ阻害薬 (=Ach作用を高める)
   @アリセプトR  ( ドネペジル)
      アルツハイマー型認知症治療薬。 コリンエステラーゼ阻害薬
      アリセプトは、ChEを選択的に阻害することにより、アセチルコリンの分解を防ぎ、シナプス間隙に
      遊離されたアセチルコリン濃度を高めることによってコリン作動性神経を賦活し、アルツハイマー型
      認知症における認知機能障害の進行を抑制する。

   Aワゴスチグミン (ネオスチグミン)
      重症筋無力症
      クラーレ剤(ツボクラリン)による遷延性呼吸抑制
      消化管機能低下のみられる手術後、及び分娩後の腸管麻痺、弛緩性便秘症
      手術後及び分娩後における排尿困難
      非脱分極性筋弛緩剤の作用の拮抗


 (3)抗コリン薬−1 (ムスカリン受容体遮断薬)  (=副交感神経抑制薬)
     副交感神経節後線維支配効果器官のムスカリン受容体を競合的に遮断して、その活性化を阻害する。
     拮抗阻害する

   @硫酸アトロピン  (アトロピン)
      ムスカリン性ACh受容体を競合的に阻害することにより、副交感神経の作用を抑制し、胃腸管の
      運動抑制、心拍数の増大などの作用がある。
      有機リン剤中毒等の治療にも用いられ、地下鉄サリン事件での治療にも用いられた。
         HR50bpm以下→ 静脈確保 硫酸アトロピンR 1/5A 静注

   Aハイスコ (スコポラミン)
      アセチルコリンのムスカリン受容体への結合を競合的に阻害する。
      中枢神経系に対する作用は、アトロピンが興奮作用を呈するのに対して、スコポラミンは末梢作用
      発現の用量で軽度の中枢抑制作用がみられ、眠気、無感動、健忘、催眠等を起こす。
      麻薬の禁断症状などや鎮痙薬として用いる。
      パーキンソン症候群にも有効。
      無痛分娩に麻薬性鎮痛薬と併用する。
      散瞳の目的で点眼する。
      鎮静効果や唾液分泌抑制効果を現す。

   Bブスコパン  (臭化ブチルスコポラミン)
      抗ムスカリン作用が増大し、自律神経節遮断作用を示す。
      鎮痙薬として腹痛時などに使用。

   Cアキネトン (塩酸ビペリデン)
      パーキンソン症候群治療薬。
      抗コリン作用によってパーキンソン病様症状(錐体外路症状)を改善する。
      類似薬としてアーテンR、パーキンRなどがある。


 (4)抗コリン薬−2 (ニコチン受容体遮断薬) (筋弛緩薬)
     ニコチン受容体に競合的に阻害することにより機能させなくする薬剤。

   @脱分極性筋弛緩薬
      終板膜を脱分極させるが、これらの分解酵素がないために脱分極が持続し、そのため終板に隣接した
      興奮膜に不活性化が生じて、筋の興奮が生じなくなる。
        1)サクシン  (SCC) (スキサメトニウム)
      アセチルコリンを2つ合わせた構造をしている。 即効性かつ数分で回復する。
      ニコチンAch型受容体に結合して脱分極を惹起するが、シナプス間隙のコリンエステラーゼ
      によって分解されないため、受容体に結合したまま再分極を迎える。

   A非脱分極性筋弛緩薬
      神経筋接合部でAChとの競合的阻害により、AChの感受性を低下させ、筋弛緩を生じさせる。
         1)ミオブロック (パンクロニウム)
             持続時間は長い(約60分)。
         2)マスキュラックス (ベクロニウム)
             持続時間は中等度(約20?30分)。



繧・♀豁ッ遘代け繝ェ繝九ャ繧ッTOP