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  ポンペイ  

 成田から11時間。
 11月の夕暮れは早い
 古代都市の石畳に腰を
 下ろして、もう少し物思い
 に耽りたいと思うのだが
 またしても門番の犬に
 せきたてられる。

  コロッセオ
 「すべての道はローマに通ず」と言う。今すべての道はニューヨークへ
 通じている。冨の集まるところにはまた災いが集まるなにやら風水めく
 話だ。そんなテロの記憶も
まだ鮮やかな時に地球を遠く飛んでゆく。

 中に入ってみると、想像以上に大きい。つわものどもの夢の跡はガラン
 として11月にしては暑いくらいの日差しのもとで静まりかえっている。

 ふとここで、この旅のテーマたる「食と文化」なるものを思い出したのだ。
 なぜかイタリア料理というものについ期待してしまうのは不思議だ。
 「うまいものはまだ食ってないなあ」とついぼやくのを聞いたガイドは
 「旅行食に期待しないで」などと言う。とくに巨大なパスタには文字どおり
 閉口した。それと比べると、シャモニーで食べた子羊の肉の方がいい。
 夕食のミートフォンデュも珍しく、味はともかくとして満足したものだ。
 小食な達人たちにはデザートの特大アイスクリームはもったいない。
 やたら飲みたがるのも日本人ばかりで、知らない振りをするのも疲れる。

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 ポンペイの遺跡でわしも考えた。遺跡にひとはいないので
 こんなページになりました。ナポリの街はうっかり通り過ぎて
 しまったようだ。「ローマは泉にあふれています。噴水は垂れ
 流しです」などとガイドは自慢する。
 「日本の川はもっとすごいぜ」と言いかけて達人は言葉を
 飲み込んでしまった。これは自慢すべきことでは無いのではと。
 
 ガイドは世界遺産のローマの町をまたもや自慢しながらも
 「でも治安も悪いですから、バカンスから帰ってみると窓が
 壊されていて泥棒が入っていることも多いのですよ」などと言う。
 なるほど、一階の窓という窓すべてに鉄格子が付けられている。
 壊れたら、壊れたところだけを補修しながら町並みはしっかりと
 保存されてゆくという、歴史に感服したものだ。しかし...
 さすがに世界遺産の中に鉄格子だけは含まれていないのだ。

 さてそれから達人たちは、やがてローマの休日へと向かう。
 真実の口にはさらりと触るだけにして、スペイン広場に腰掛て
 夢想する。このつぎはナイルの流れかアマゾンか。
 エアーズロックかマチュピチュか?  トレビの泉にそぐわない
 ことなど想いながらコインはしっかり投げ入れたのだ。
 達人たちはまるで探検家のようにうれしそうだった。