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障がい者と歯科診療:総論
障がい者と歯科診療 
障がい者と歯科診療の特性
 
 障がい者は知的又は身体的なハンディキャップのため、口腔の管理が遅れがちになり、う蝕や歯周疾患にも
 罹患しやすくなる

 その上、健常者より治療は困難である。

           
              『歯医者に聞きたい障がいのある方の歯と口の問題と対応法』より引用

障がい者と歯科疾患・口腔疾患 
 
 障がい者に散見される歯科疾患

   う蝕症   歯周病 
   粘膜疾患
   摂食嚥下障害 など

 

『歯医者に聞きたい障がいのある方の歯と口の問題と対応法』より引用

障がい者歯科診療における困難性 
 
 障害者の歯科治療や保健管理を困難にしている要因には次のような4つの問題があげられている。

 @医療に対する理解と適応行動の問題
    精神遅滞、自閉性障害、統合失調症、認知症などにより、歯科治療の必要性、治療法等についての理解が
    得られないことがある。

 Aコミュニケーションの問題
    聴覚・視覚障害、言語障害などによりコミュニケーションが困難である。

 B運動機能と姿勢制御の問題
    脳性麻痺、筋ジストロフィー、脊髄損傷、脳血管障害などにより通常の治療体位が得られなかったり不随意な
    反応が起こる。

 C医学管理上の問題
    高血圧,心疾患,呼吸器疾患などの内部障害などの全身疾患により、全身管理の必要性。

障がい者歯科における行動調整法 
 
 障がいのある患者の非協力的な行動を適切な行動へ導く方法として、行動調整法が応用される。

 行動調整法とは
   安全で確実な歯科治療を行うために、患者の心身の状態を調節して行くための方法。
   行動調節、行動管理とも呼ばれる。

 




『歯医者に聞きたい障がいのある方の歯と口の問題と対応法』より引用


 行動調整法の種類

  @行動変容法(行動療法)
     行動療法の理論や技法を用い,特別な器具,器材や技術を必要としない方法.トレーニングとして
     だけではなく,どの場面でも応用できる最も基本的な方法。

    TSD法(Tell Show Do)
      これから行うことを言って説明し(Tell),実際に使う器具を見せ(Show),説明したことを行う(Do)方法。
      行動変容法の中でも非常に有効な方法で,TSD 法を基本にトレーニングや診療を進める。

    オペラント条件付け
      報酬と罰をタイミングよく与えることで適切な行動に導く方法。
      歯科場面では報酬として,「できたね」「上手だね」「がんばったね」など“賞賛”が特に頻用される.

    系統的脱感作法
      弱い刺激のものから克服していき,順に強い刺激にステップアップしていく方法。
      歯科場面での弱い刺激は歯ブラシによる歯磨きで,まずは座って歯磨きをするところから始める。
      次いで、水平位で歯磨き,ミラー,探針,バキュームと目標までトレーニングを繰り返す.

    10カウント法
      医療者側が10 を数えながら行うことで,先の見通しをたたせる方法。
      実際は,TSD 法で10 数えながら行う(Do)間,指示に従って行えればすぐに賞賛する
      (オペラント条件付け),など
      他の方法を併用する。

  A体動コントロール
     マンパワー,器具や器材を用いて患者の動きを安定させる方法。
     患者の同意の下に行い,必要以上のコントロールは避ける配慮が必要。

    生理的・神経学的コントロール
      マット、バスタオルを利用して安定した姿勢を保持し緊張を緩和する.。

    物理的コントロール
      人的な方法  器具を使った方法(レストレーナー)

      抑制器具の使用の安易な選択や習慣化は避けるべきである。
      使用にあたっては次のような点に配慮が必要と思われる。
        ・保護者,家族への十分な理解と同意を得る。
        ・術者自身が診療室への誘導から抑制までに直接参加してタイミングよく指示し行う。
        ・誘導から抑制,治療中にかけて明るく声かけをして患者を励まし勇気付けるように努め,
         患者および保護者の精神面にも配慮する。
        ・抑制時間を可能な限り短縮するため事前に介助者スタッフと打ち合わせて治療の十分な準備
         をした上で行う。
         あくまで治療は無痛的に進める.。

 

『歯医者に聞きたい障がいのある方の歯と口の問題と対応法』より引用


 B精神鎮静法

   薬物を用いて行う方法。
   意識下のため,患者の協力性が低い場合や身体機能が低下している場合などは,応用が難しいことがある.

   前投薬
     薬剤を経口や座薬により治療前に投与する。

   笑気吸入鎮静法
     低濃度笑気を鼻マスクで吸入させる。

   静脈内鎮静法
     薬剤を静脈内に注入する


 C全身麻酔法
   薬物を用いて行う方法。
   無意識下のため患者の状態に左右されず,安全に質を維持した治療を行うことができる。

参考資料 
 
『歯医者に聞きたい障がいのある方の歯と口の問題と対応法』 2015 口腔保健協会 長田豊・長田侑子 著

『歯科衛生士のための障害者歯科第3版』  医歯薬出版 2006 足立 三枝子 (著), 緒方 克也 (監修)
『スペシャルニーズ デンティストリー 障害者歯科』 医歯薬出版 2009 日本障害者歯科学会 (著, 編集)

『障害者歯科のための行動変容法を知る』 1999/9 大津 為夫 クインテッセンス出版
『子どもの歯科訪問診療実践ガイド』 医歯薬出版 2019 小方 清和 (編集),

「障害(児)者における診療時の行動調整」 佐藤昌史 昭和大学歯学部小児成育歯科学教室 昭歯誌 26:249-255, 2006

 

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