むし歯(う蝕)の検査・診査                

   1:臨床診査について       
   2:臨床検査について      
   3:カリエス診査の実際

   むし歯(う蝕)の原因から見た診査項目としては以下のものがあります。
      1.宿主に関する診査・・・フッ素の使用、唾液緩衝能  ―フッ素の使用状況
      2.細菌に関する診査・・・S.mutans、Lactobaccilus ―SM数、LB数
      3.基質に関する診査・・・食物(砂糖など)の摂取状況  ―飲食回数
      4.その他       ・・・DMS指数、カリオスタット、RDテスト、サリバテスト

   う蝕検査の目的
      う蝕の原因因子を調べることで、現在のう蝕の活動状況や今後の罹患性などを
      推測し、、それらにより適切な治療計画の目安とします。
      

1:臨床診査
  
 DMF指数
      意義 
        1)過去のう蝕の罹患状況や治療経験を表したもので、一般的に指数の
           高いものほどう蝕活動性も高いと考えられます。
        2)初診時年代別DMF指数(永久歯)は、10代から20代にかけて大きく
           増加しており、この時期のカリエスコントロールの重要性が分かります。
           また女性のDMF指数が男性より大きいのは、女性は男性よりもハイリスクで
           あることが示されていると推測できます。

      測定方法 
              D(decade)・・・う歯数
              M(missing)・・・喪失歯
               F(filling) ・・・治療した歯

               D + M + F = DMF指数  (乳歯の場合はdmf指数)
                                      1歳6ヶ月・・・0.15本
                                       3歳   ・・・1.99本

 

 

 

 

 DMF

 

 

 

 

 

 歯数

 

総数

 1.2

 5.91

 8.56

 15.67

 

5

  

  

 0.01

 0.01

 

6

 0.14

  

 0.04

 0.19

 

7

 0.22

  

 0.13

 0.35

 

8

 0.31

  

 0.59

 0.89

 

9

 0.32

  

 0.8

 1.12

 

10

 0.61

  

 1.67

 2.28

 

11

 0.39

  

 1.81

  2.2

 

12

 0.67

  

 1.77

 2.44

 

13

 0.92

 0.02

 2.74

 3.68

 

14

 1.74

  

 3.48

 5.22

 

1519

 1.58

 0.04

 5.53

 7.15

 

2024

 1.39

 0.15

 7.98

 9.52

 

2529

 1.53

 0.36

10.07

 11.97

 

3034

 1.14

 0.57

12.03

 13.74

 

3539

 1.33

 1.21

12.61

 15.15

 

4044

 1.34

 1.84

12.46

 15.64

 

4549

 1.38

 3.35

 11.3

 16.02

 

5054

 1.53

 4.37

10.99

 16.89

 

5559

 1.2

 6.34

10.08

 17.62

 

6064

 1.32

 8.01

 9.64

 18.97

 

6569

 1.12

11.58

 8.87

 21.57

 

7074

 1.26

15.56

 6.99

 23.81

 

7579

   1

19.11

 5.45

 25.56

 

8084

 1.26

20.77

 3.63

 25.65

 

85歳以上

 0.66

24.01

 2.49

 27.16

 

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   プラークスコア
      意義 
         1)プラーク指数は口腔内の清掃状況を示す指標であるとともに、う蝕や歯周病の発症を
           予知するのに有効です。
         2)O’Learyの方法、Ramfjordの方法、Tureskyの方法などがありますが
           当院ではO’Learyの方法を使用しています。

      測定方法 
                O'Learyのプラーク指数
             プラークの付着している歯面の合計/被検歯面数×100=[%]     

   飲食回数
      意義 
          食事回数の増加(間食)は継続的なpHの低下を持続させ、その結果脱灰
          時間が延長してしまうため、う蝕の危険性は増加します。

      測定方法
          患者さんからの問診によって行います。
          通常の食事+間食(喫茶なども含む)の回数で表します。
            3回以下( or 砂糖が非常に少ない)
               う蝕という観点から非常に「良好」な食事です。
               砂糖やう蝕を発症させる他の炭水化物が非常に少ない状況です。

            5回以下( or 砂糖は少ない)
               砂糖は少なく、う蝕という観点から適正な食事といえます。
               砂糖やう蝕を発症させる他の炭水化物が低レベルな状況。
            7回以下( or 中程度の砂糖摂取)
               中程度の砂糖摂取です。
               砂糖や炭水化物が比較的多く含まれている食事です。
               全身的な栄養という観点からは完全とはいえない状態です。
            8回以上( or 砂糖摂取が多い)
                     
砂糖摂取が多く、う蝕という観点からは不適切な食事です。
                        砂糖やう蝕を発症させる他の炭水化物が多く、ラクトバチル
                        ス菌の数は多いです。果物や野菜が少なくビタミン不足。

           ※この場合の「砂糖」とは、細菌がそれから酸を産生することができるあらゆる種類
             の糖(炭水化物)を意味します。
             中でもショ糖は(菌体外多糖による)歯垢形成が増えるために特にう蝕原性が高い。
                                          
   フッ素の使用状況 
      意義 
          フッ素は定期的に繰り返し塗布することで歯質を強くし、むし歯になりにくくします。
          たとえ低濃度であっても、頻繁にフッ化物を使用することが重要です。

      測定方法 
          家庭での使用歯磨き剤を聴取して、来院状況とあわせて判断します。

   関連全身疾患
      意義 
         
いくつかの全身疾患や状態は、直接あるいは間接的にう蝕の発症に影響を及ぼします。
          例えば唾液の生成やその組成に影響を与えたり、う蝕を発症させる食事内容に変化を
          及ぼしたり、薬剤の長期服用をもたらします。
          乳幼児期における疾患や状態がエナメル質形成に影響していることもあります。
          その他の問題や心身障害も考慮に入れなければなりません。
          例えば、視力が悪いと口腔衛生を良好に保とうとするときに影響が出るでしょう。
          また心身障害がある場合は、歯磨きが適切に行われにくいと言えます。

      測定方法 患者さんからの問診によって行います。
            疾患なし
                う蝕に関連のある重要な全身疾患の兆候は見られない状態です。
                「健康」であるということ。
            軽度
                う蝕の発症に間接的に影響を与える全身疾患やカリエスリスクが高いと考え
                られる状態です。例)視力低下、運動困難
            重度
                長期間寝たきり状態や唾液分泌に影響を与える薬剤の継続的な使用がある
                状態です。
                                        
           
2:臨床検査
 
  唾液量
      意義 
         1)唾液全体について
             唾液には各種の抗う蝕作用(緩衝作用、洗浄作用、カルシウムイオンの供給)があり、
             その分泌量の多寡がむし歯になりやすいかどうかに関係しています。
             唾液腺は15歳前後で成熟し、それまでは唾液量が増加していくことがデータから
             分かります。
             加齢による唾液量の減少はないともいわれていますが、人間の身体は加齢に伴い
             全身疾患、薬剤服用、咀嚼昨日の低下などの因子が付加します。
             その結果、年齢が進むにしたがって実際には唾液量が減少しているようです。
          2)初診時年代別唾液量
             初診時の年代別唾液量の推移。
             加齢にしたがって唾液量が減少しています。

      測定方法 
          5分間パラフィンワックスを噛んで、出てきた唾液を容器へ吐き出して、唾液の総量を
          測定します。

   唾液緩衝能
      意義
         1)唾液緩衝能とカリエスリスクについて
              緩衝能が高ければ、脱灰時間が短く再石灰化の時間が長いです。逆に緩衝能
              が低ければ、脱灰時間が長いだけでなく再石灰化の時間がなくなってしまいます。
               そのために緩衝の低い口腔ではう蝕が発症しやすいです。
         2)初診時年代別唾液緩衝能の割合
              初診時の年代別唾液緩衝能を見ると、幼児期と60歳以上で緩衝能の低い人の
              割合が多く見られます。
         3)唾液量と唾液緩衝能との関連
              唾液量が少ないと、緩衝能も弱い傾向にあります。

       測定方法 
          
採取した唾液をスポイトで取って、試験用ストリップスに1滴落とします。
            5分後に色の変化で唾液緩衝能を見ます。(サリバテスト参照)
                                              
   SM菌数
       意義 う蝕とSMとの関係・・・SM菌は以下の特性により、う蝕に最も強く関与する細菌
                です。
               ・強い歯面への付着能        ・強い酸産生能 
               ・酸のデンタルプラークでの停滞  ・持続的な酸産生能
       測定方法 ミュータンス菌の数を調べるために、舌の上でストリップスを数回、回転させて培
               養試験管に入れて2日間培養します。

   LB菌数
       意義 
          1)う蝕とLB菌について
              LB菌は食習慣やう窩や不良修復物が1ヶ所でも存在すると、その数に関わらず
              LB菌の増殖に有利です。
              また、飲食回数の多い人でう窩や不適合補綴物の存在下においては、LB菌が
              増殖しやすいとされています。
              唾液量との関連については、唾液の作用(抗菌作用、浄化作用)がLB菌の菌数と
              関係しています。
           2)LB菌とDMFTとの関連
              DMFTが多くなっても、う窩や不良補綴物がない場合はLB菌の数は少ないと
              いわれています。
           3)LB菌と唾液量との関連
              唾液量が多いとLB菌が少なくなる傾向にあって、唾液量が3ml/5分以下の場合 
              LB菌は有意に多くなります。

       測定方法 
            採取した唾液をスライドの寒天培地上にかけ、培養試験管に入れて培養機(35〜37℃)で
            4日間培養してLB菌の数を調べます。
                                             

3:カリエス診査の実際

  サリバテスト(唾液検査)の概要 (詳しくは「サリバテスト」へ)
      意義
          医療者側は、患者さんの口腔内にどんな現象が起こっているのかを把握し、その結果
          を分かりやすく説明して具体的な予防プログラムを作成・提出することができます。
          両者が情報を共有してう蝕を予防するための行動につなげていきます。

      診査・検査項目 
          DMF指数、プラークスコア、飲食回数、フッ素の使用状況、関連全身疾患
          唾液分泌量、唾液緩衝能、SM菌・LB菌数の測定
          ※高齢者はカンジダ菌の検査などを追加します。

      検査後の指導項目例
           実施した結果からリスク因子を解明して、その除去や方法について説明します。
               1)宿主の因子
                  ・DMFTの把握(過去の状況を知る)
                  ・唾液の分泌量・・・分泌量の増加を促すためによく噛んで食べる。
                  ・フッ化物の応用
               2)細菌の因子
                  ・ミュータンス菌の数
                      キシリトール製品の処方
                      母子感染を軽減するための妊婦教育。
                  ・ラクトバチルス菌の数
                      生息・増殖部位となるう窩や不適合補綴物を口腔内から除去する。
                      糖濃度の高い飲食物を頻回に摂取している場合は食生活の指導。
               3)生活習慣の因子
                  ・飲食回数・・・頻回の場合には回数を減らす指導。
                  ・プラークコントロール・・・ハイリスクの部位のコントロール。

       *検査前の注意事項 
             ・抗生剤や他の薬剤の内服状況の確認
                 抗生剤などを服用している場合は、検査を後日に延期した方がよいです。
             ・検査1時間前の食事、歯磨きの中止。
             ・食後、ブラッシング後1時間以内は検査を行えません。
             ・12時間以内の殺菌剤配合の洗口液使用の確認。


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